先日6月12日、第三子が産まれた。病院入りしてからほぼ半日がかりの大変な出産だった。胎中という守られた世界から、勇気を振り絞って初めてこの世界に出てきた娘の姿と泣き声。想像を絶する痛みを乗り越えて、我が子に出会い、「赤ちゃん!赤ちゃん!」と言って涙ながらに喜ぶ妻。三度目の経験だが、やはり涙を禁じえなかった。人生で最も感動した瞬間を3つ挙げるとしたら、おそらく、1回目の出産と、2回目の出産と、そして今回の出産だろう。そのくらい、いのちの誕生の瞬間は感動的だ。
私は三回とも立ち会い出産を経験した。男である以上、妊娠も出産もできない。女性にとっては、出産は最も感動的であると同時に、最も痛い大変な経験でもある。あまり役に立つわけではないが、そんな妻を少しでも支えたい、そして二人の子どもが産まれる瞬間を共有したいという一心から、立ち会い出産は自然な選択だった。
手を握り合い、痛みがきたときは一緒に「ふーっ」と息をはく(夫がやっても意味はないのだが)。痛みの周期が何分間隔になったのか計算しながら、妻を励ます。腰や手足をマッサージする。痛みの波の合間に汗をふいたり、飲み物をあげたりする。うちの場合はビデオを回すのも、もう一つの仕事だ。そして、その瞬間を共有することで、「一緒に出産した」という想いを共有することができる。父と母と子が三位一体になって共同作業する最初で最高の瞬間だと思う。
もちろん妻への感謝の想いがひときわ増すことは言うまでもない。出産後、妻をねぎらいたいという気持ちが湧き、赤ん坊や上の子たちのお世話、家事や育児など、出産以外でできることはやってあげたいという想いになる。そして赤ん坊への愛情、自分の子どもだという想い、父親としての自覚を強めることができる瞬間でもある。
私は第二子のときと同様、今回も育休を取ることにした。振り返ってみると、第一子の出産に立ち会ったことで、妻を少しでも支えたいと思えるようになったことが大きかったのかもしれない。育休とまではいかなくても、立ち会い出産を経験することで、その後、夫の家事育児への積極度は大きく変わってくるのではないかと感じる。
近年、立ち会い出産をする人が増えているようだ。2008年の電通の調査では49.8%とある。1997年の調査では18.2%、それ以前はもっと少なかっただろうから、急増しているといってよいだろう。この傾向と合わせるように、男性の育児への積極度も高まっている。立ち会い出産は意外に男の育児参加を促すのに効果的なのではないだろうか。また、そういった経験のある人が今後、管理職や経営者になっていくことで、妊婦への配慮や子育てしやすい職場環境、ワークライフバランスなどが大きく進展することを期待したい。ネットで検索すると、「夫が衝撃を受けてセックスレスになり、離婚する夫婦もいる」といったような否定的な意見も多くみられる。タイミングが合わなかったり、様々な難しい事情もあるだろう。もちろん、消極的な方に押しつける気はまったくないが、もし迷っている方がいれば、私は断然お薦めしたい。
出産という奇跡の瞬間を、愛する妻、愛する我が子と共有できることは至上の幸福だと思う。それを可能にしてくれた、家族や義父母、病院の医師、助産師さん、職場の同僚にも改めて感謝したい。
学びのエバンジェリスト
本山勝寛
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@k_motoyama
「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。1男1女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。