スノーピーク、西武ライオンズ、ドゥクラッセ……「熱狂顧客」を作る方法 --- 内藤 忍

アゴラ

今週発売の日経ビジネス最新号(2013.6.24.)を読んでいたら、「熱狂顧客の育て方」という記事を見つけました。拡大しない市場の中で成長している会社や商品は何が違うのかという疑問に対し、「熱狂顧客」を作ることを提案し、事例を紹介しています。

熱狂顧客を作るためには、いくつかのパターンがあり、それを実例で紹介しています。


一つは、「顧客を差別すること」です。

新潟にあるスノーピークというアウトドア商品販売の会社は、スノーピーカーという熱狂的なファンを持っている会社です。この会社はファンを戦略的に増やすために、ポイントカードでレギュラー会員からブラック会員まで5段階にランクをつけ、割引や限定商品の紹介などで囲い込んでいきます。年間購入金額が100万円を超えるブラック会員が300人、それにプラチナ会員3500人という5%のファンが売り上げの4分の1を占めるようになっています。

会員制度で顧客を育てていく仕組みが売上を大きく伸ばしています。

西武ライオンズも2009年からファンクラブを前年のチケット購入額に応じて会員を4段階に分け、熱狂的なファンに絞ったイベントを開催するようにしました。すると、会員によるチケット収入が大幅に伸び、通常の球団では2~3割の会員比率がライオンズは5割までアップ。これによって、万年赤字の球団が2013年には黒字に転換したそうです。

広くファンを増やすより、リピートしてくれる熱狂顧客を増やす方が、経営上はメリットがあるということです。

もう一つは「万人をターゲットにしないこと」です。

2007年に創業した婦人服の通信販売のドゥクラッセは、顧客を40代から50代に限定し、首のたるみや、更年期障害で体温調節が難しい女性向けの商品などきめ細かい商品提供をすることで急成長しました。

また、ソニーの泳ぎながら聞けるウォークマンは、社内の反応はいま一つの中発売してみると、国内で一時品切れになるくらいの大人気。意外なことに水泳に使う人は3割。残りはランニング、カヤック、ボートの愛好家などだったと言います。ニッチな商品が新しい顧客を生み出した好例と言えるでしょう。

数は少ないけど、圧倒的に支持してくれる人を持っている企業は、顧客のロイヤリティが高く、他社に対して差別化し続けることが容易になります。そのためには、そこそこの満足ではなく人に薦めたいと思う位の商品・サービスが提供できなければなりません。

となると、万人受けするものではなく、一部のマニアに喜んでもらうような方向を常に考え、そのような顧客を優遇することで、さらにロイヤリティを高めていくような戦略が有効なのです。

会員が100万人いても1万人しかいなくても、売り上げが立つか立たないかは、その中の何人がどれだけお金を払ってくれるかによって決まります。

優良な顧客にだけ、極めて良質なサービスを提供して、密度で勝負する経営は、規模の経済は追求できませんが、新たに起業するような会社の経営戦略として価値がある方法だと思いました。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年6月23日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。