性風俗産業以外に女性が魅力を感じる仕事を創りだせるか

松本 孝行

橋下市長の風俗活用発言も落ち着きを取り戻しつつあります。橋下市長が性風俗を利用するように言ったことが正しいかどうかはさておき、性風俗産業といえば私は関係者の女性から大変興味深い話を聞いたことがあります。なぜこういう夜の仕事をしているのか?という私の問いかけに「将来の不安に対する自己防衛だ」とその女性は答えたのです。

感情を別にすると一般的な女性(つまりエリートではない)にとって最も稼げる仕事というのは、今も昔も性風俗だということなのでしょう。この女性の一言は非常に重く、日本の女性の労働環境の悪さというものを表していると思います。


発展途上国、特にカンボジアやタイなどは現在経済成長著しいですが、その裏では今でも村から児童買春のために売られていく少女たちがいます。児童買春のために子供をブローカーに売ってしまう最大の理由は貧困です。子供が一人減ると口減らしによって食べる量が減ります。加えて金銭を得ることで一時的ではありますが、食べることくらいには困らなくなります。

一時期はこういった児童買春される少女たちを救おうと多くの人達が寄付などをしていましたが、それでは一時的な解決にしかならないということで、現在は村ごとに仕事を作って経済的に豊かにする方向に支援方法が変わってきています。主に農業が主体ですが、自分たちで生産し余剰分を売却するレベルになれば、子供を売ることもなくなるだろうという狙いです。自ら稼いで食べて生きていける力をつけることこそが、児童買春を防ぐことになるという取り組みには私も賛成です。

一方の日本の女性が働く場所をみてみると、相変わらず男尊女卑的な傾向は続いています。一定以上の役職に出世することが女性はできなくなるという「ガラスの天井問題」はまだ依然として存在しています。政治の世界では中東やアフリカの一部の国よりも、日本は女性国会議員の数が少ないと状況です。パート・アルバイトの半数以上は女性が担っていますし、出産・育児後の復帰も難しいため、M字カーブと呼ばれる現象は未だに起こっています。当然男性よりも女性の方が年収は低く、平均すると200万円以上低い状態です。

このような日本の女性の労働環境を見ると、レベルは違いますが途上国と構図は同じです。十分に稼げる仕事が無いことが原因で、性風俗産業に関係を持ってしまうという構図です。。もし日本のエリートではない一般の女性が男性と同じくらい稼げる仕事があれば、性風俗に自ら足を踏み入れる可能性は非常に低いでしょう。私が出会ってきた性風俗関係の女性はほとんどが金銭目的で働いており、それ以外の目的で働いている女性は極々少数のマイノリティです。

簡単な例で考えてみます。男性は月間200時間働くと仮定して時給3000円の仕事があるとした場合、年収700万円程度になります。ボーナスも加味した場合、年収700万円に届く仕事は男性にとっては少なくありません。しかし女性が同じだけの額を稼ごうと思った場合、なかなかそのような職場は用意されていないでしょう。特に出産後に探そうとなれば尚更です。だからこそ同じだけの額を稼げる性風俗産業で働くという決断をする人がいても、おかしなことではありません。多くの国民が「年金はちゃんと貰えるのか?自分の老後はどうなるんだ?」と経済的・金銭的な将来の悩みを抱えている状況ですから、性風俗で働くことで将来の不安から自己防衛しようと考えるのはある意味自然なことです。

タイトルの「魅力を感じる」というのはもちろんやりがい等のことではなく、金銭的な魅力という意味です。一般的な女性が日本で働くなら、最も金銭的な魅力があるのは性風俗であるのは戦前戦後から全く変わっていないようにも見えます。女性が活躍出来る社会をと安倍首相はおっしゃっていますが、まずは女性が男性と同じくらい稼げる職を性風俗産業以外に創りださねばなりません。女性の労働環境こそ戦後レジームからの脱却が必要なのではないでしょうか。