ポスト自民党再考 ~ 投票のその先へ --- 佐藤 正幸

アゴラ

通常国会が閉幕した。最後は、首相の問責と引き換えに重要法案を廃案に追い込むという、民主党の悪あがきを国民に広く知らしめる結果となって幕を閉じた。

参議院選挙後3年間は大きな選挙がない。巷の観測通り、自民党が参議院で大勝すれば安倍自民党が長期にわたって政権を維持する可能性が高いが、これは国民の不満をガス抜きする機会がないとも捉えられる。日本の国民は非常に飽きっぽいから、参議院選挙後の3年間で自民党の支持率はかなり下がる可能性がある。あの小泉首相でも最後は支持率が40%代まで落ちた。やることをやっても飽きられるのである。


戦後日本政治は自民党と「その他」という構図を長らく維持してきた。自民党vs社会党、自民党vs日本新党などの連合勢力、自民党vs民主党といった具合である。

この構図は民主党が参議院選挙で瓦解した後もしばらく続くと考えられる。明確な対立軸が欠けた今、自民党vs「なにか」であるのだが、この「なにか」が決まっていないものの自民党を中心に政界が回るという発想にコペルニクス的反証はない。

だから、これまでの日本政治の選挙結果というのは自民党が失速を始めた時に有権者にとって不満の受け皿になる政党があれば票は「その他」に流れるが、十分な対立軸を打ち出せる政党がない場合、投票者は棄権という行動に出ることになる。結果、投票率が下がり、組織を持った政党が圧倒的な強さを発揮し、自民党単独政権の地盤は揺るぐことがなくなる。

これを受けて国民は(棄権した有権者も含めて)「ほら、やっぱり政治は変わらないじゃないか」という幻想を抱くことになる。

日本の民度は高いと言われるがこの点は非常に稚拙だ。

こうした幻想を持った有権者の雰囲気と言うのはなんとなしに世代を超えて伝わる。子供も孫も、「なんだ政治なんてそんなものか」と思うことになるだろう。

世代を超えて間違った幻想が受け継がれてきた結果、今の日本の民主主義があるといってもいい。

戦後の民主主義の上に自民党政治が立脚できたのはこうした背景があるのではないかと分析するが、これでは有権者にまともな投票先が育つはずもなく、有権者自身がこうした環境を作ってきたとも言えないか。

「政治がまともじゃない」「投票したいところがない」そう嘆く人はどれほど政治にコミットメントしているのだろうか。極論を言えば、「投票したいところがない」ならば政治団体を作り政党化するなり、自分が立候補してやりたい政治を行うというのも一つだろう。これまで十分なコミットメントを政治に対しても行ってこなかった結果が現状の停滞感を招いたのではないのか。黙って税金を納め、選挙に行くだけで義務は果たしたという時代は終わったのである。後は政治家にお任せで何とかしてくれるだろうというヒーローになんでもお任せ的な発想はもう捨てた方がよい。コミットメントをするという姿勢こそが政治を変える一歩になる。

ではどうしたらよいのか。

まずは政治に対して明確なコミットメントを国民自身が行うこと。義務教育にメディアリテラシーの授業などと併せて政治教育を導入してもよいのではないか。マニュフェストの比較や各政党の歴史、政治家のスキャンダル史みたいなコマも設けて興味を引いてもよい。

それから国民が政治に対してもっと寛容になること。すぐに成果を求め、政治家の使い捨て的な姿勢で選挙に臨むのはやめることだ。いやしくも国民の代表であり、(本来は)自身の生活を犠牲にして働く人たちである。政治家を使い捨てるような現状ではとてもまともな人間が政治家として育つとは考えにくい。

政治の世界は思っている以上に悲惨だ。政治家本人は落選すればただの人以下。秘書の生活実態もブラック企業と比べ物にならないほどブラック。プラチナクラスのブラックだ。残業代は出ない。土日は当然休みなし。出費は多い。選挙があれば一日ボロ雑巾のように働く。(私の経験ではないのだが)代議士に貸した金は返ってこない。など悲惨そのものだ。こうした政治の世界に暮らす人たちの生活実態を国民はほとんど知らないだろう。こういう実態もドキュメンタリー映画にでもして広く世間に知らしめたほうがいい。

もちろん政治の世界に住人にはとんでもなく傲慢でしょうもない人間もゴマンといる。こちらの人たちも国民に対して謙虚でなければ国民に対しても政治には寛大でいろとは言えないので、政治家の仕事量を可視化できるような仕組みづくりも必要になってくるだろう。
  
筆者はこうした国民サイドと政治サイドの人間がお互いに歩み寄ることこそ必要なのではないかと考える。その結果、政治の世界を育て、候補者が育つ。自民党が悪いとは言わないが、新しい選択肢が次の選挙までに育つよう働きかけて行きたいと思う。

佐藤 正幸
World Review通信アフリカ情報局 局長
アフリカ料理研究家、元内閣府大臣政務官秘書、衆議院議員秘書