その昔、電力改革を最初にやろうとすると大変なので、先ずはガス改革からやって、その余勢を買って電力改革に繋げようという腹だった。実際、それはうまくいった。
今はその逆で、経済産業省は、“電力システム改革”の次はガス改革であると“電力システム改革”報告書で書いている。日本経済新聞も4月25日の社説で“電力と歩調をあわせガス市場も改革を”と書いている。
しかし、経産省も日経新聞も、華々しい側面にしか焦点を当てていない。確かに、電気事業法とガス事業法は同じような法体系を持つ。同じ役所の担当部が所管している。しかし、電力市場とガス市場は全く違う。一例は事業者数。電力は10社で全て超大企業。ガスは大手都市ガス3社、中小都市ガス200社、簡易ガス1500社、LPガス22000社。いわゆる営業区域も錯綜しているし、業態も多様。
電力市場を語る時は“既存電力vs新電力”となりがちだ。これははっきり言ってピントずれまくりである。百万歩譲ってそうだとしても、ガスは“既存ガスvs新ガス”とはならない。ガスは、電力との小売競合と原料調達協調、既存ガスどうしの集約・再編などがポイントとなる。先ずは下図をご参照。
ここに、LPガスと電力が加わってくる。これが、ガス市場制度改革論の入口となる。大手都市ガス、中小都市ガス、簡易ガス、LPガスなど多様な既存事業者どうしの利害調整が必ず前面に表われてくる。入口戦略を間違えると、出口に辿り着く前に恥じることになるだろう。あたかも、“電力システム改革”の如く。
ガス市場制度改革の入口とすべきは、大手都市ガス会社や電力会社の持つLNGタンク開放ではない。消費者の生活コストを極力抑制するという素直な政策的視点に立てば、1. LNGとLPGの競合関係、2. ガスと電力の競合関係から入っていくべきだ。その端緒になり得るのは、簡易ガス事業という特殊な形態である。
編集部より:この記事は石川和男氏のブログ「霞が関政策総研ブログ by 石川和男」2013年6月30日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった石川氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は霞が関政策総研ブログ by 石川和男をご覧ください。