孤立無援の厚労省 --- 城 繁幸

アゴラ

週刊現代の特集「年金制度廃止 私はこう考える」がなかなか充実しているので紹介しておこう。充実、といっても、中身は年金問題でおなじみの鈴木先生から高橋洋一氏、モリタクまで、識者総動員での厚労省フルボッコである(筆者もちょこっとだけコメント)。

紙媒体だと一過性なので、目立つものだけピックアップしてネットに放流しておこう。


「年4.1%の高利回りで積立金を運用し続けます、という説明など、誰が聞いても納得できない話です。運用で挽回しようにも、その元手が毎年6兆円ずつ減っていくわけですから大して意味がありません」(学習院大・鈴木亘教授)

「役所の年金担当者たちは、最後の最後まで支給開始年齢の上限をはっきり言わないでしょう。受給者と若い世代の比率を眺めると、支給開始年齢は80歳近くになってしまいますからね」

「ヨーロッパでは今後半世紀で未成年者が1割増えるのに、日本では逆に5割以下に減ります。つまり年金をもらう人は増え続け、支える人は減る一方。人口対策はもはや手の打ちようがなく、日本の年金財政は未来永劫、悪化するばかりなんです」(政策研究大学院大学・松谷明彦教授)

「年金支給開始年齢は老後の生活設計を立てる上での根幹。支給開始年齢についても、なるべく早めに情報提供するのが親切というものだと思うのですが……」(元・厚生省年金局数理課長 坪野氏)

「厚労省が考えたのは、国民年金を維持するために、個人の意思では離脱できない厚生年金に加入するサラリーマンの負担を増やして肩代わりさせる方法です。『厚生年金は会社が保険料の半分を払っていてトクをしている』と言われますが、これは明らかに詭弁です。既に今の50歳以下はマイナス、実質“元本割れ”となっているのです」(橘玲)

「そんな年金制度なら必要ない」

「すでに40年間保険料を払った人の場合は支給額を減らすしかありません。これからの人には払った分を返して、別に税金で最低保証金をつくる。それしか方法はありません」(早稲田大:原田泰教授)

「残念ながらいま、50歳以下の世代の老後は、カネのある人やスキルのある優秀者は生き残れるけれど、そうでない人はお先真っ暗というのが実情でしょう」(筆者)

「65歳以上の人達は“逃げ切れる”でしょう。悲惨なのはその下の世代です。上の世代のツケをどっさり被ることになります」(明治大学・加藤久和教授)

「外国なら暴動が起こっているレベル」(法政大学・小黒一正准教授)

「厚生年金基金は官僚が天下って管理してきました。税金のように保険料を徴収して官僚が財テクして、失敗してきたわけです。公的年金制度がなくなれば、そんな官僚に預けないで、自分たちで運用できるようになる。確かに自己責任にはなりますが、官僚に好き勝手にやられて、損をしても文句しか言えない仕組みよりはいいと思います」(嘉悦大学・高橋洋一教授)

これを見ても明らかなように、党派の違いに関わらず、もはや日本の年金制度は実質的に破綻しているということだ。「100年安心」どころか、既に不安で胸いっぱい状態である。

ただ、筆者自身は年金制度がなくなると生活保護が激増し、結局社会全体の負担は変わらないので、若いころからきっちり本人から徴収した上で老後に支払うシステム自体は必要だと考えている。

そのためにも、政府は一度“不都合な真実”を明らかにした上で、全ての世代に負担を求めつつ、持続可能な新制度への切り替えを提案すべきだろう。

恐らく年金支給は70代、支給額自体も今より何割かカットという結果に落ち着くだろうが、重要なのは落とし所がきっちり目に見えるということだ。ならば、若いうちからそれに向けて備えることが出来る。

100年安心できるかどうかは、老後に貰える金額ではなく、そこにいたる道筋の展望だというのが筆者の意見だ。


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2013年7月02日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。