国際原子力機関(IAEA)主催の「核安全保障に関する閣僚級会議」に出席するためウィーン入りしたイラクのホーシュヤール・マフムード・ズィーバーリー外相は1日、IAEAの閣僚会議午前の会期後、本紙との単独会見に応じ、同国のテロ問題、対イラン、対日関係などについて、その見解を明らかにした。
▲ズィーバーリー外相(2013年7月1日、ウィーンのIAEA国連本部内で撮影)
ズィーバーリー外相は、多発するテロ襲撃事件について、「わが国の政情を混乱させ、民主化の進展を阻止しようとする勢力の仕業だ」と指摘する一方、「わが国は安定に向かっている。国民経済も原油生産量の増加もあって回復、経済成長率も8%と高成長だ。インフレも低下、雇用も拡大するなど、国民経済には希望がある」と強調した。
シーア派の隣国イランとの関係については「両国は良好関係だ。ただし、わが国は独自の政策、国益を優先する独立国家だ」と強調し、シーア系が支配するマリキ政権がイランの影響下にある、というメディアの報道を否定。最後に、対日関係では「発展の余地はある」として、両国間の積極的な人的交流の必要性を強調し、日本企業の積極的なイラク市場進出を求めた。
──イラクではここにきてテロ事件が頻繁に発生し、政情の不安定さを感じる。
「テロ・グループはわが国を混乱させ、民主システムを阻害しようと画策している。わが国は長い間、テロ勢力によって混乱させられてきたが、状況はかなり改善されてきた。ただし、依然、政治信条の相違もあってテロが起きている。イラクの政治家は昔から国家の安定を配慮して一体化するというより対立する傾向が強い。しかし、それらの政治勢力間の相克は管理、克服できるものだ」
「多くのテロは一定の地域に限定され、イラク全土に波及していない。テロリストはイラク国民の生活をストップしたり、国民経済の活動を停止することはできない。イラクの国民経済は世界でも最も急速に成長している国の中に入る。原油生産量の増加もあって、経済成長率は8%だ。インフレはダウンし、失業者も減ってきた。イラクは問題を解決できる民主憲法の枠組みを持っている。あなたが指摘した最近のテロ事件は地方議会選挙に関連する地域に集中している。来年は国民議会選挙が控えているから、テロ・グループの活動には十分警戒しなければならないだろう」
──テロの背後には、イスラム教のシーア派とスンニ派の宗派間の対立があるのではないか。
「あなたの言いたいことは理解できるが、シーア派の政治家もスンニ派の指導者も政府内で職務に従事、連携している。彼らは対立していない、政権に参画しているのだ。同じ政府、同じ議会で政策を実施している。もちろん、彼らは議論し、激しく討議する。各政党は自身の政策をメディアにアピールする。しかし、欧米メディアが報じるように、シーア派とスンニ派の宗派間の闘争といったものは存在しない」
──マリキ政権はシーア派の拠点、イランの強い影響を受けていると報じられている。
「わが国とイランとの関係は良好でポジティブだ。イラクは独自の政治、国益を有する独立国家だ。わが国がイラン政府の意向に従うとか、他国に依存している、といったことはあり得ないことだ。わが国はイラン、そして米国とも対等の関係だ。日本とも同様だ」
──日本はイラクに対して関心が高い。
「日本企業の活動はわが国では非常に静かだ。もっと積極的にわが国の市場に進出してもいいのではないか。安倍晋三首相はイラクの友人の一人だ。新生イラクは考えられないほど可能性を秘めた国だ。だから、イラクと日本両国はもっと親密な関係を樹立すべきだし、出来るはずだ」
──両国関係の発展に対するアイデアがあるか。
「両国の商工会議所の人的交流、両国共同委員会の活発化だ。イラクは躍動している。衝突し、対立している国ではない。北アフリカ・中東諸国のエジプト、シリアでは現在、カオスが支配し、政情は不安定だ。イラクはベター・チャンスを提供できる。日本企業の進出を歓迎する」
【Zebari Hoshyar】
1953年、クルド地域のAqrah生まれ。フセイン政権時代はクルド人の自治権の為に戦う。英国のエセックス大学で社会学を修得、ヨルダンで政治学を学ぶ。クルド人自治政府のバルザニ大統領の叔父。クルド民主党に所属。 過去、数回日本を訪問(最近では昨年5月)するなど、知日派だ。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年7月2日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。