ガス料金規制を検討する際、どのような視点から行うべきか。いろいろあるが、流通面に焦点を当てて見るという視座もある。ガス料金には「規制料金」と「自由料金」があるが、制度的なものとしては「規制料金」だから、ガス事業(一般ガス事業・簡易ガス事業)に係る料金制度に関するものだとなる。
一般ガス事業、簡易ガス事業の流通構造を視覚的に表現すると、それぞれ下図のようなものだ。
(出所:日本ガス協会)
(出所:日本LPガス協会)
一般ガス事業者(都市ガス会社)については、東京ガス・大阪ガス・東邦ガスなど大手都市ガス会社の場合には上流から下流まで全てを自社で、それ以外の中小地方ガス会社の場合には下流のみ自社で、と業態は幾つかに類型化される。簡易ガス事業者については、殆どの場合には下流からとなる。
規制料金であるガス料金は、総括原価方式による政府の査定を受ける。“電力システム改革”では、規制料金である電気料金に係る総括原価方式が槍玉に上がって、遂には総括原価方式の撤廃云々となっている。しかし、これは非常にナンセンスな話だ。
総括原価方式そのものが悪いのではない。査定に係らしめる総括原価の内訳である個々の原価が当該「規制料金」事業にとって時宜を得ているかどうかの基準が甘かったというのが正しい。総括原価方式以外で適格な方式は、今の地球上には見当たらないであろう。私にも皆目見当がつかない。
総括原価方式撤廃などと威勢ばかり良くて実態が伴わないような問題提起はやめて、個別原価の現代的な必要性と過不足性に着目した見識あるガス料金規制改革論を提起してもらいたい。そのための基礎の一つとなるのが、上図のような流通構造であろう。これらのうち、どこをどう考えるかによって、料金規制の対象も性格も左右される。電気事業もガス事業も、料金規制の正当性は、『材の流通経路の独占水準の高さ』にある(だから本当は、ガス事業ではない“LPガス小規模導管事業”も視野に入らなければならないはずだ)。
編集部より:この記事は石川和男氏のブログ「霞が関政策総研ブログ by 石川和男」2013年7月11日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった石川氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は霞が関政策総研ブログ by 石川和男をご覧ください。