緩和された日本の移民権の可能性と問題点 --- 岡本 裕明

アゴラ

3年間、技術者や経営者として日本で働けば移民権がもらえる、としたら魅力的でしょうか?

私は見方によっては移民国カナダよりハードルが下がったのではないかと思います。


政府の成長戦略の中で優秀な外国人は日本にメリットをもたらすものとして昨年から「高度人材ポイント制度」を導入し、それまでの10年の滞在要件を5年に引き下げたばかりでした。今回の改正案はそれを更に3年にまで短縮することで優秀な外国人が日本で長く活躍できるようにするものであります。更にその配偶者、親、家政婦の帯同も可能になるのです。これは一定要件を満たす前提としては先進国の移民法でももっとも緩やかな部類に入るのではないかと思います。

例えば年間20万人以上の移民を政策的に受け入れているカナダでは親の帯同は極めて煩雑な手続きを要求されます。それは移民当事者の子が親を帯同するに当たり、親の保証人として政府に承認され、その上でゆっくりと時間をかけてプロセスする二段階制度をとっています。その待ち時間は5年ぐらい掛かるかもしれません。なぜゆっくり、そして制度上認められているのに率先してやらないかといえば医療費負担の問題であります。

カナダは医療費が無料。つまり、親が来れば月々1万円にも満たない保険料で医療が受け放題になってしまい、カナダの財政負担が大きいものと指摘されています。ですので、私の知り合いの著名な移民コンサルタントがこっそりと「親をカナダに連れて来るモチベーションを下げている」というのがもっともな話かもしれません。

日本も医療保険は大幅な赤字であるわけですから、親の医療費をどうするのか、そのあたりの仕組みをディスクローズしてもらいたいものです。

一方、今回の日本の移民権の特徴として移民権取得後、就業できる職種が制約されるということでしょうか? 例えば会社経営者は派遣にはなれないということです。とりもなおさず、単純労働者の無秩序な増加を防ぐということでしょうか? とはいえ、抜け道は簡単に作れる気がしますので年収の縛りなどを含めた対策を採っておいたほうが良いかと思います。

さて、この制度でどのぐらい外国人永住者が増えるかは見ものだと思います。現制度導入後約一年で434人しか認定されていないようです。問題は「卵が先か、鶏が先か」という話と同じで永住権が欲しい人がいても職を見つけることが出来るのか、という問題があります。カナダでもそうなのですが、新移民者が突然バリバリと仕事が出来るわけではないのです。3年間、労働ビザをもらって日本で働き、且、移民として残る人に絞るとすれば人数的な枠は必然的にかなり少なくなる気がいたします。

政府としては人口減に対応する経済力減退を食い止める一つの方法として打ち出しているものだろうと思います。発想としての努力は認めますし、良くここまでこぎつけたと思いますが、政府の目標の2000人は遠い道のりかもしれません。

むしろ、外国企業誘致のための特区の設定を早く詰めるべきかも知れませんね。

今日はこのぐらいにしておきましょうか?


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年7月11日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。