夏がきた。シーズン・イン・ザ・サンである。海の日に皆さんに問いたい。観光地における接客で残念な気分になったことはなかったか? 時間をかけてやってきたのに、高いお金を払ったのに、この接客はどうなのよ? という。
私はここに、残念な接客をする、レジャーをぶち壊しにする宿泊・飲食関係者を「接客ピストルズ」と命名する。これこそが、「観光立国日本」の実現を阻害するのではないだろうか。
故郷北海道にきている。もともとのきっかけは仕事でなのだが、これに合わせて観光もしている(原稿をおまたせしている編集者の皆さん、毎朝5時から10時までと、夜は原稿を書いているので、ご安心頂くとともに、石を投げないで頂きたい)。
私は、北海道が好きだ。札幌が好きだ。いつも、北海道帰省はいい思いしかしない。なんせ、空気が違う。食材も美味い。この空気を吸いながら、美味い料理を北海道限定ビールサッポロ・クラシックを飲むのは至福の一時だ(もちろん、飲酒運転はしていないのでご安心を)。なお、サッポロ・クラシックはちょうど今、JR東日本のNEWDAYSの北海道キャンペーンで売っているから、ぜひ飲んで頂きたい。今までのビール観が360度変わる、超絶の美味さである。
そんな大好きな北海道なのだが、今回、奮発して、観光地にある高級ホテルに行ったのだ。宿泊ではなく、ランチなのだが。建物は立派だった。景色も素晴らしい。湖を一望でき、感激した。「下町の海原雄山」と呼ばれる私の舌を唸らすほど、食事も素晴らしかった。
しかし、接客が大変に、大変に残念だった。
明らかにチームワークが乱れている様子。注文を取ることすら、ぎこちない。見ていて、こちらが落ち着かない。最初に、そのホテルで入った蕎麦屋でそんな接客を受けたのだが、その後入った、同じホテルのカフェもそうだった。いや、蕎麦屋はまだ序の口。サミットにも使われたという触れ込みの、高級ホテルのラウンジで、こんな接客を受けるとは。あたかも、『スクール☆ウォーズ ~泣き虫先生の7年戦争~』において、相模一高に109対0で負けた時の市立川浜高校なみのチームワークの悪さだった。もう、笑うしかなかった。
その後にクルマで移動して泊まった、これまた有名なリゾートホテルも、接客が大変残念だった。チェックインカウンターに長蛇の列だった。しかし、長蛇の列になっているのは、明らかにオペレーションがバタバタしているからである。見ていて、呆れるしかなかった。
もちろん、「たまたま」かもしれない。私が気が短いからかもしれない。ただ、Facebookで「どうして、地方の有名観光地はこんなに接客が悪いのだろう」とつぶやいたところ、多くの賛同を得ることができた。実際、クチコミ情報もなかなか残念なのだそうだ。
経験上で言うと、北海道もそうだが、沖縄の離島などもそうだ。いや、他にも「地方の観光地」で、しかも「そこそこの値段がするホテル」の接客は、いかがなものかと思う瞬間がある。
これは、観光立国日本実現に向けた、大きな壁ではないだろうか。まあ、それでも海外のサービスレベルに比べれば良いのだろうが。ただ、今後の日本の観光は、貯金と年金を持っている高齢者の取り込みが鍵となってきている。舌もこえていて、求めるサービスも高度化しているこの層を、このレベルのサービスで納得させることができるのか。
もっとも、これは人材の採用、育成の問題でもある。優秀な人材を獲得できていない、育成する人がいないというわけである。
このような、客を不愉快にさせるホテル、飲食店などの従業員を「接客ピストルズ」と呼ぼう。もちろん、伝説のパンクバンド、セックス・ピストルズとかけている。
高校時代に初めて聴いたピストルズは衝撃だった。美しい話ではない。音楽雑誌などで、ミュージシャンたちが「影響を受けたバンド」として、このグループをあげていて、期待したのだが、率直に下手だったのだ。『シド&ナンシー』という映画もみたが、見ていて切なくなった。
いや、ピストルズはそういう下手な部分も含めてレジェンドなので、いい。社会をぶち壊すスタンスなので、いい。「アナーキー・イン・ザ・UK」などを聴くと心が洗われるので、いい。
ただ、高級リゾートホテルの従業員は、セックス・ピストルズではないのだ。ジョン・ライドンでもシド・ビシャスでもないのだ。
我々も、単なるクレーマーと化さずに、上品に抗議しよう。宿に関して、特に私がおすすめするのは、リクルートライフスタイルが運営するじゃらんnetのクチコミ情報に書くことだ。クチコミ情報が書けるサイトはたくさんあるが、実はこのサイトは古くからクチコミ情報を掲載している。ちゃんと投稿は審査をしている。宿泊した人じゃないと書けないようになっている。明らかに本を読んでいない人の、8割が人格否定の1点レビューが放置されるAmazonとは違う。
観光は、今後の日本にとって重要な産業の一つであるはずだ。宿にとって、接客は大事であることは言うまでもない。旅行・飲食業界関係者、特に高級店(というと特殊浴場みたいだな)の方は、このような「接客ピストルズ」を何とかするべきだ。
「接客ピストルズ」に困っている観光客の皆さん、立ち上げるのは今でしょ。