久しぶりやな。こう暑いとものを書く気がなくなってまう。あと、2~4度地球の平均気温が上がったらワシ、筆を折るつもりや。なっ、温暖化も悪いことばかりやないやろ……てな事書くさかい、辻センセの記事で、ジキジキに怒られるわけや。
しばらく暑い話題から離れよと思う。これはワシの脳内キクイムシの陰謀かもしれん。というわけ(どんなわけや?)で、教育の話をする。
初対面の人物の器を速算するのにワシが使っている方法を、一つ教えたろ。学校教育というものにどの程度の期待をしているか、ということや。あんまりものを考える習慣のない人間の特徴に、「手放しで学校を礼賛する」というのがある。学力、体力、しつけ……学校が良くなればすべて解決すると思っておる。
学力にしろ、体力にしろ、苦労していっぱしのものを持っている人間は、「結局、自分で汗をかかん限り、どないもならん」ということが身にしみてわかっている。強烈なモチベーション、ハングリー精神……考えようによっては、一種の性格のゆがみや。学校教育では、なかなか、こういうものは育ててくれん。
そやから、天才の集団、最適化された組織、ひとつ上のクラスの競争、何かの分野で、チョコっとでもこういう世界を垣間見たら、学校に期待している場合やない、ということがようわかるはずや。
もともと、学校の授業で際立った個性が育つことはない。音楽の授業の縦笛でいくらええ点とっても、それだけで音大に入ったやつはおらん。体育の時間のエースストライカーでも、Jのジュニアチームには入れんやろ。こんなことは誰でもわかっておる。
そやけど、こと勉強となると異論が出てくる。良い学校に進学するためには、小さいときから塾や予備校に行くのが当たり前という状況を嘆いておいたら、とりあえず一幅の教育論が完成する。そやけど、どないせい、というんや?
韓国では一時、家庭教師が禁止されていたという話や。筒井康隆の小説に廃塾令というのがあった。こういうふうに教育を規制したら、一番喜ぶのは私立学校や。東大進学で有名なある国立高校が入学者に所得制限を導入するという噂やけど、このネタだけで、灘や開成のセンセ方、この夏3回はウマいビールが飲めると思う。
私立学校も含めて、国公立以外の全ての民間教育を潰してしまわない限り、規制による「教育の平等化」は達成できん。そして、もしそれをやったら、親の学力がダイレクトに子どもに反映されることになる。母親が高学歴で専業主婦の子どもと、両親が遅くまで働いている子どもでは、勝負になるわけがないがな。
結局、古代ギリシャのように、一定年齢の子どもを強制的に寄宿舎制の学校に集めて……という所まで行かんと、教育機会の平等は達成できんやろ。
さて、前置きはこんなもんにして、土曜授業。大阪の小ジャレた小学生の間では、「橋下はんが演説してたら石なげたろか」という声が上がっている。原因は、土曜授業と夏休みの短縮や。これは、あらゆるタイプの小学生から評判が悪い。
まず、単純に遊びたいやつ、一番怒っておる。彼らを学校に縛り付けて補習をやったところで、モチベーションの低さはどうしようもない。一部の私立学校が、土曜授業や夏休みの短縮で成功しているのは、「これを耐えたら、自分にはバラ色の人生が待っている」という現実的なニンジンが、鼻の先にぶら下がっているからや。
偏差値60のやつが70になったら見える世界が様変わりするが、30のやつが40になっても、大して人生代わり映えせん。なんか間違うておると思うが、これが今の日本の現実や。子どものうちに若いうちにトコトン遊んどく、というのが案外正解かも知れん。土曜日に登校してる場合やないで。
芸事やスポーツに燃えている連中も、別の理由で怒っている。もし、大阪市が全国に先駆けて土曜授業や夏休みの短縮に走ったら、真っ先におこるのが、ガンバやセレッソのジュニアチームの練習不足による弱体化やろ。それ以前に、本気でサッカーやらせたい親は、大阪市に住まんようになる。この現象は、多かれ少なかれ全てのスポーツでおこる。ダンスや音楽なんかも同様。囲碁将棋あたりまで影響がいく。
公立学校の土曜休業以来、スポーツなんかの分野で地域のボランティアが中心になり、いろんな活動が育ってきている。草野球チーム、草ビッグバンド、子ども碁会所、いろいろある。こういう関係も片っ端からワヤになる。
私財をなげうったり、貴重な休日を潰して、手塩にかけて育ててきた地域の子どものチームやらバンドやらが、一発芸市長の一存で潰されたら、以後、その地域の活動は大幅に縮小する。只でさえ、指導者の高齢化が進んでいる大阪市で、この影響は大きいで。
学業のほうも同じようなもんや。土曜日に受験勉強ができなくなれば、大阪中の受験生がハンデを背負うことになる。それ以前に、中学受験を考えている親は、大阪市を敬遠する。星光やら四天王寺やらの伝統受験校は奈良や和歌山の子どもばかりになり、浪速のウィンブルドン化やがな。
要は、学校に来るよりも、別のところで何かやってたほうが身につくものが多い子どもらを、学校に縛り付けたらどうなるかということや。
土曜授業の導入に拍手しているのは、自分が卒業して以来、ぼおっと人生を過ごし、ろくに学校にかかわったこともなく、地域の子どもとの繋がりもなく、そのくせ今の子どもの現状に一家言持っている、困ったジイさんバアさん連中やろ。なにしろ、性懲りも無く維新の候補が大阪地方区でトップになる無責任な民度やからな。
京都奈良和歌山滋賀兵庫なんぞの親や塾関係者は大喜びや。学業も芸事もスポーツも、大阪市の子ども集団が丸ごと地盤沈下してくれるんやから、ほんま笑いが止まらんで。
えっ、そのうち近県でも土曜授業が導入される? いずれ全国でってか? 大丈夫、そうなったら、子どもを海外留学させられる富裕層と、韓国・中国の連中や。理由は書くまでもないやろ。
今日は、これぐらいにしといたるわ(新決めぜりふ、わかるやつにはわかる)。
ヨハネス 山城
通りがかりのサイエンティスト