注目されたアップル社の4月から6月の四半期決算は売り上げこそ前年同期比を上回ったものの利益は22%減。ただ、事前予想が低めだったこともあり、株価はむしろほっとした買いで5%程度上昇しました。
アップルが抱えている問題とはiPhoneの販売価格低下による影響とiPadの売れ行き不振の二点に絞られます。iPhoneについてはアメリカや日本では新型が売れていると説明していますが、新興国では旧型を中心としたモデルの販売で利益率が抑えられていることが利益率を圧迫しています。
また、iPadについてはこの四半期では27%も売り上げを落としています。理由は競合するタブレットメーカーがアップルの価格を基準にどれだけ安く出来るかというマーケティングをしていることが大きいのではないでしょうか? また、中国でのiPad販売の成績があまりにも悪かったことも影響している模様です。
つまり、iPhoneもiPadももはや他社との競争に巻き込まれ、アップルらしい独自性を失っているといえるのかもしれません。MacのパソコンがWindowsと一線を画していた時代、双方は競合するというより、わが道を行く、という流れだったはずです。それはMacがある意味、特化した機能と性能を保持していたからです。
ところが、iPhoneの成功はアップル社をデファクトスタンダードをもつ会社として位置づけたことでメインストリームの鎮座することになりました。引き続き売り出したiPadはその地位を確固たるものにします。結果として多数の競合相手と対峙することになり、当然ながらそこには開発競争と価格競争という一般企業にはごく当たり前の戦いに巻き込まれることになったのです。アップルはそれまで価格戦略は強気でその製品を愛する人だけが買ってくれればよい、という戦略でしたが、今、まさにその岐路に立っているわけです。
さて、決算説明会に当たり、アップル社は大きな暗示をしています。それは「いくつかの新しい製品が秋から来年にかけて発売される」というものです。「いくつか」ですから当然それは二つ以上ということになり、その二つとはほぼ間違いなくアップルTVとウェアブルディバイス、つまり、アップルの場合には時計型のまったく新しいコンセプトのIT製品ということかと思います。
同社が近年では珍しく既に9ヶ月間も新製品を打ち出していないわけですから当然売り上げも注目度も下落してしまいます。よって、発売されるであろう新製品が如何にアップルらしさを見せるのか、そこにかかっていると思います。同社が世界の注目を集めてしまう以上、一定の大衆性のある製品になるかもしれませんが追随を許さない独創性を出せるのか、再びサムスンやグーグルと激しいバトルを繰り返すのか、まさに岐路にあるといえるでしょう。
ただ、唯一いえることはアップルの株主はアップルの製品云々よりも一株あたりの利益や株主への還元策に大きな期待がある点において昔のワイルドで荒削りなアップルからスマートでエリートな雰囲気が漂う企業にならざるを得ないのだろうというのが私の見方であります。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年7月25日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。