カネがかかる「選挙管理」のシステムも問題 --- 立山 五十鈴

アゴラ

7月21日に参議院議員通常選挙が行われました。今回の選挙は、初のネット選挙解禁により、一部では非常に盛り上がっていました。東京選挙区の山本太郎氏と鈴木寛氏の争いや、比例のわたなべ美樹氏などの話が多かったような気がします。

そういった政治家の評価については各方面で散々議論がなされていると思いますので、今回の記事では触れません。

今回は、仕事として投票所に赴き、感じたことをまとめようと思います。


まず、投票所にはどんな仕事があるかを見てみましょう。

・受付係
・名簿対照係
・投票用紙交付係
・投票管理者
・投票立会人
・庶務

ざっと書くとこんな感じです。では次は仕事の内容について。

・受付係
選挙人から入場整理券を預かりカウントする。集めた入場整理券は男女別に仕分け、後述の投票用紙交付係との照合しやすいようにしておく。

・名簿対照係
入場整理券に記載されている個人情報と選挙人名簿を照合し、本人確認を行う。投票所によっては電子化されているところもある。

・投票用紙交付係
選挙人に投票用紙を交付する。男女別にカウントする。ここで誤って2枚とか渡してしまうと次の日の新聞で(名前は載らないものの)有名になれる。

・投票管理者
投票所の総責任者。基本的には庶務係に実務は任せているところが多い。

・投票立会人
選挙が正しく行われているかを監視する。’見ること’が仕事のため、実務は一切なし。

・庶務
1時間に1回、地方公共団体の選挙管理委員会に投票速報を伝える。他の者は持ち場を離れられないため、お茶やお茶うけを配る。お手洗い等、実務担当者が持ち場を離れなくてはいけないときに、一時的に持ち場担当に入る。記載台や候補者名簿に落書きがされていないか確認する。鉛筆を使う投票所なら定期的に鉛筆を削る。弁当の発注や選挙人の質問を受けたり、その他雑務をする。

現在の投票の制度では、これらの人員は削減することはできず、投票所の忙しさに関わらず10人は配置されます。一日に訪れる投票者数は数百人から6000人程度。例えば神戸市(H23時点)なら、一番多い所で有権者数が12,666、投票率が60%なら約7500人。期日前投票・不在者投票者も考えると、当日に投票所へ来る人数は多くても6000~7000人前後になります。

一方で、一番有権者数が少ない投票所は168人。私は神戸市民ではないので実態は分かりませんが、上記の各仕事に従事する人間は確保しなければならないと思います。

このシステムが「選挙は金がかかる」と言われる所以なんですね。法律で方法が決められてしまっているために、人数の過多に合わせて柔軟に人員配置を変えられないのです。体験してみれば尚理解出来ますが、選挙事務従事者は「何もしていない時間」が多いです。場所にもよりますが、午前6時から午後9時までの長時間に渡り投票所に拘束され、何もしない時間が多々あるけど、一度ミスでもしようものならその投票所を吊るしあげるかのごとくミスを報じる。

これが無駄以外のなんなんでしょうか? というのが私の考えです。

人間が管理する以上、どんな選挙にもミスが出るのは当然なんですから、もっとやり方を試行錯誤してもいいと思うんですよね。

・ネットによる投票を導入
・上記と関連してコンビニ等で簡単に投票ができるようにする
・各投票所の時間帯別の人数を元に、複数の投票所で人員を共有する
・投票所システムをやめて、一定の期日を決め役所で一括して投票管理を行う。障害者や高齢者など移動が困難な人たちには、投票所を廃止して浮いた金でサポートを考える
・郵便による投票

などなど。特に投票所の入場券を郵便で送付しているのだから、郵便事故のリスクは既に受け入れているわけで、郵便による投票なんかすぐにでもできそうなんですけどね。

国民は政府に対して「無駄を削減しろ!」と声高に主張している訳ですから、経費を削減するためにある程度のリスクを受け入れる方向性も考えなければならないのでは?
公務員バッシングは今に始まったことではありませんが、そういう無限の要求が改革を阻害していることにも気づいてほしいものです。

立山 五十鈴
地方公務員