原発汚染水についての素朴な疑問 --- ヨハネス 山城

アゴラ

日本ハムの大谷が二刀流やと言う。そやけど、セリーグの投手は全員二刀流のはずや。実際、過去にも巨人の桑田や阪神のキーオなど打も売りにしているピッチャー、結構おったで。

だいたい、なんでこういう選手を指名打者制のパのハムが、わざわざドラフト上位で取ったのか、なんか変や感じがする。なぜか、マスコミはあまり突っ込まん。まあ、こんな話なら笑って済むが、福島の汚染水でも同じような、メディアが扱わん素朴な疑問がある。

まず、事故自体を考えてみる。半径10km以上の範囲で人が住めんようになったんやから、大量の放射性物質が、数日のうちに飛び散ったはずや。もちろん、それは原子炉の中から出てきたもの。ということは、どこかに「穴」できたということや。


わしの知る限り、2年以上たった今も、その「穴」を「塞ぎました」という話はもちろん、「穴」の「場所を特定しました」という話も聞いたこともない。普通、「穴」を特定したり塞いだりしても、「他に穴はないのか」検証がいる話やけど、そんな贅沢なレベルには、全然達しておらん。

一方、こうしている間も、(元)炉心の冷却は行われている。メルトダウンの程度がどこまでは分からんが、少なくとも空気中に高温の炉心が露出して酸化はおこっているはずや。そこへさして海水がガンガン入ってきた(仕方ないことやけどな)。セシウムやストロンチウムがあれば、たちまち水溶液になる。それが、さっきの話の「穴」から外へ出る。こんな分かりやすい話はないで。

最近見つかったトレンチ(地下溝)での超高濃度汚染水。東電は「事故直後のもの」と言っているが、何を根拠にそんなことが断定できるんやろな。だいたい、2年も前にトレンチ(元々、水を溜める設計にはなってない)に溜まった水が、溢れも、漏れも、蒸発もせんと、そのまま残っておるとは考えられへんやないか。

そやから、これは事故直後の汚染水だけやとは考えにくい。それに、もしそうなら、無人の使い捨てのポンプでも使って、こんな物騒なもんをサッサと全量汲み上げてしまうべきや。これをやらんとこ見ると、汲んでも汲んでもオカワリが来る「わんこそば」状態にあることに自信があるんやろな。おそらく、やってみての結論やろ。

普通に考えたら、循環冷却によって(元)炉心で出来た放射性のセシウムやストロンチウムの水溶液が、「穴」経由で、原子炉の地下に漏出して、豊富な地下水に混じって海へ向かっていて、一部がトレンチに顔を出している、ということになる。

地下のどこから海に合流しているのかようわからんのが、タチが悪いのか、都合がエエのか、これもようわからん。敷地に流入する地下水を水ガラスなんぞを使って止めようとい話もあるが、これも効果は限定的や。あんな海辺の土地で地下水圧が下がったら、その分、海水が流入してくる。潮の干満に合わせて海水が出入りし、毎日、少しずつ汚染水が漏れ出す。

話を原子炉の「穴」に戻そう。「事故時には原子炉の中が高圧やったから大量の物質が漏出したが、冷却に成功した今は大丈夫」という、反論もあろう。そやけど、放出量から考えて、「穴」がピンホールのレベルではない。

さらに、事故から2年、余震、海水による酸化、凍結、そして何よりもメンテが全く行えないこと、から考えて建屋および周辺の防水性能は、どんどん劣化しているはずや。ということは、量の大小はあれ、今も着実に炉内からの汚染水の流出は続いていると考えるしかないやろ。反論するなら、どの時点で「穴」がふさがったのかということと、なぜトレンチの超高濃度汚染水の汲み上げが行われないのかを説明してほしい。

現在の汚染の主役、セシウムは、メチャクチャ水に溶けやすい元素や。身近なもので言えば、食塩に含まれるナトリウムに似ている。つまり、水があれば必ず溶けると思っておいていい。

そやから、除染しようが、放置しようが、完全に回収して環境から切り離さない限り、遅かれ早かれ、河川や地下水を経由してセシウムは海に向かうことになる。若干マシではあるが、ストロンチウムにも似たような性質がある。

日本のような多雨国での原発事故の汚染は、急性期のものを除けば、本質的に海洋汚染問題になる。チェルノブイリの影響でさえ、太平洋の魚類で観測できたんやから。今回の事故が無事に済んでいるはずがないがな。

今のところ目立った報告はないが、カリフォルニアかオーストラリアあたりで、極端な汚染魚が見つかったら、その時点で政治状況は様変わりするやろ。「風評被害で売れなくなった魚みな買い取れ」と言い出す国が必ず出てくる。

そうなったとき、誰に賠償金を払わせるのか、あるいはどうにかして踏み倒すのか、いまのうちに考えておいたほうがええと思うがのう。

今日は、これぐらいにしといたるわ。

ヨハネス 山城
通りがかりのサイエンティスト