米大リーグ薬物騒動は構造的問題か

アゴラ編集部

米国プロ野球のMLB(大リーグ機構)が、8月5日、所属する13選手が禁止薬物規定に違反した、とし、各選手に対する出場停止処分を発表しました。ニューヨークヤンキースのアレックス・ロドリゲス(A-Rod)選手は8月8日から今年のシーズン丸ごととなる211試合、ほかの12選手は50試合の出場停止になります。


ところが、処分の軽い12選手は容疑を認めて決定を受け入れましたが、ロドリゲス選手だけは異議を申し立ててMLBに抵抗しています。同選手の場合、2013年のシーズンは股関節の故障から試合には出ていません。しかし、MLBの処分への抗議の意味からか、8月5日に行われた対シカゴ・ホワイトソックス戦に今季初となる強行出場を敢行。試合では一安打を放ったんだが、大ブーイングを浴びたらしい。異議の申し立て中は試合に出ることが可能です。

今回のドーピング問題では尿検査など確固とした証拠があったわけではなく、禁止薬物を選手に処方した医師の手書き文書からMLBが各選手に問い糾した、という経緯のようです。この薬物、法的に米国内で禁止されているわけではありません。しかし、使うことでプロ野球選手としての姿勢が問われる。MLBの倫理規定では処分の3度目から球界からの永久追放が定められているんだが、まだ過去に2回目の100試合出場停止までしか処分が出ていないようです。つまり、選手にとっては倫理うんぬんより、薬物を使ってでも好成績を残して好待遇を得たほうがいい、ということになり疑惑はなくなりません。

表題のブログでは、今回の薬物疑惑について、MLBのコミッショナー、パド・セリグ氏が来年の任期満了までに球界の「浄化」を進めたい、という思惑があり、さらに年俸が高過ぎるロドリゲス選手を放り出したいヤンキースの願望があったのでは、と書いています。両者の利害が一致した今回の騒動だとすれば、選手の疑惑もさることながらMLBの体質にも関わる問題なんでしょう。巨大ビジネスに成長したMLB。人気スターであるロドリゲス選手への疑惑。同選手は優秀な弁護団をそろえ、調停機関への提訴を考えているらしい。絡み合った利害が衝突し、この先どうなっていくのか要注視です。

ユウキの気になったニュースまとめ
Aロッドの薬物問題には様々な思惑が交錯


TorにはFBIもお手上げの時代終わる…地上最大の児童ポルノ売人摘発。Tor身元特定ウィルスもFBI?
ギズモード・ジャパン
サイバー犯罪を操作する上でもっともネックになっているのが「Tor(The Onion Router)」の存在です。オニオン・ルーター、という名前の如くタマネギのように何重にもパソコンを経由していくソフトウエア。もとは米国海軍が開発した技術で、ネット上の匿名性を保つために利用されています。Torを使えば、情報の発信元が特定されにくなり、リレーする台数が多くなれば、ほぼ特定が不可能になる。サイバー犯罪者にTorを使われると捜査側はお手上げ、という状態でした。日本で起きた遠隔操作ウイルス事件でもTorを使うことで、犯人を特定できなくしています。この記事では、Torのリレーサービスのアドレスが吸い上げられ、これをしたのがFBI(米国連邦捜査局)だったんじゃないか、と書いている。Torも無敵ではなくなりつつある、ということです。

日本の自信回復に期待する
tnlabo’s blog
「円高」が日本の元気を奪っていた、というブログです。今はグッと円安になってるんで、自動車などの輸出関連企業を中心にして好業績になっている。その一方でガソリンの値段が上がって影響が出始めているし、輸入素材に頼っている製造業などは悲鳴を上げているらしい。こうした「円安環境」を乗り越えなければ、日本は健全に立ち直れない、というわけです。その足枷になってるのが、やはり火力発電のエネルギー問題と電気料金の値上げ。原発の再稼働を含めて早急な対策が必要です。

「基礎研究」とは?
大隅典子の仙台通信
いわゆる「日本版NIH」なるものが作られようとしています。この「NIH」は米国の国立衛生研究所(national Institutes of Health)の略であり、がん研究や老化研究、精神衛生などの多種多様な専門分野を統合した組織です。当初は日本の研究者らが主導していたヒトゲノム計画も米国の政治戦略の結果、ここに実質的なイニシアティブを握られてしまいました。だから、なおのこと安直になんでも「日本版」をくっつければいいというものではない。このブログでは曖昧に使われがちな「基礎研究」とはそもそもなんぞや、というところを書いています。基礎研究には二つあるそうで、それは医薬などで具体的な成果を上げるための研究と生命現象の真理を探究することを目的にする研究です。前者ばかりがもてはやされ、後者へのリスペクトが失われつつあり、その結果、全体として基礎研究がないがしろにされている、というわけ。ただこのブログには、二種類のAとBが出てくるので少しややこしいですな。トップダウン型が前者であり、ボトムアップ型が後者であるようです。

Scientists put cancer-fighting power back into frozen broccoli
PHYS.ORG
新鮮なブロッコリーには抗がん作用があるそうなんだが、冷凍するとその物質がなくなってしまう、という悪いニュースと、冷凍野菜でも健康に有益な物質を復元することができる、という良いニュースを紹介している記事です。冷凍状態から解凍する過程で、そうした物資が失われる。76℃くらいで解凍すればいい、と書いています。電子レンジでもそこなわれにくいらしい。ようするに調理の方法によって違う、ということです。


アゴラ編集部:石田 雅彦