日本に必要なのは「金持ち優遇」が当たり前の社会 --- 内藤 忍

アゴラ

消費税の議論が始まっています。上げるべきか、上げざるべきか。様々な意見がありますが、いずれにしても目的は国の税収を増やし、財政の立て直しをしていくことだと思います。私は税の専門家ではありませんが、この税金に関して、日本では国の戦略というのが、とてもわかりにくいと思います。

最近、いわゆる富裕層の人たちが海外に出ていくという現象が指摘されています。正確な数字はわかりませんが、私の周りにもシンガポールに拠点を移すという人が、かなりの数で存在します。


彼らが口々に言うのは「日本ではお金持が尊敬されない」という不満です。むしろ、お金を稼いでいると何だか悪いことをして儲けたようにさえ思われたりする。そんな世の中で、コソコソしているのは嫌だと海外に出て行ってしまうのです。

税制もお金を持っている人、お金を稼いでいる人から徴収しようという仕組みになっています。頑張って稼ぐと、褒められるのではなく、たくさん税金で取られてしまう国。

「金持ち優遇」というと何だかネガティブなことのように聞こえますが、そもそもお金をたくさん稼いで、税金もたくさん払っている人を優遇することは悪いことなのでしょうか?

法人税の世界では、国際競争が進み、各国は優良企業が国内で納税してもらえるように法人税の引き下げをしています。法人税を増やすには、税率を上げるのではなく、税率を下げる方が有効だということに各国が気が付き始めたということです。

個人の所得税や相続税でも同じことが言えるのではないでしょうか。高額所得者の税率を上げれば上げるほど、お金を稼げる優秀な人材が海外に出て行ってしまう。その結果、税率の上昇が税収の減少につながっていく可能性もあるのです。

だから日本に必要なのは「金持ち優遇」です。身分制度のように固定されたものではなく、誰でも努力してチャンスをつかめば、お金持ちになれる機会がある。フェアな競争をして、成功した人は、優遇され尊敬される。

百貨店でも航空会社でもクレジットカードでも、高額のお金を使う人たちは「金持ち優遇」されています。そんな当たり前のことが、一般にもっと広がって欲しいと思います。

理想論かもしれませんが、そんな国になれば、成功者に妬みや僻みを持つ前に、自分も同じように頑張ろうという気持ちになっていくと思います。足を引っ張って相手を引きずり下ろすよりも、自分も同じようになった方が良いと思えるようになる社会です。

真面目に働いでたくさんお金を稼いでいる人が、きちんと評価され、尊敬される国。そんな当たり前の国にならなければ、尊敬されない成功者が次々と日本を離れ、未来は本当に暗いものになってしまう。そんな未来予想図は描きたくありません。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年8月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。