複数の観察ポイントを持つことで、ニュートラルな視点を手に入れられる --- 内藤 忍

アゴラ

海外に出かけて、日本を外から見ると今まで見えなかったことが見えてきたりします。

例えば、国内のメディアでは、アジアのニュースが頻繁に流れています。しかし、対象となっている国は中国と韓国がほとんどです(あとは拉致問題の北朝鮮)。確かに韓国や中国は距離的にも近いですし、経済的な結びつきも強いというのはあると思います。


しかし、シンガポールやマレーシア。さらにタイ、カンボジア、ベトナムといった国の情報になるとほとんど国内では報道されません。

報道されるとしても、「シンガポール=金持ちが税金逃れに行く国」、「カンボジア=学校に行けない子供がたくさんいる国」といった具合で、何ともステレオタイプな切り口ばかりです。

また、特に新興国に行ってから、日本に戻ってくると技術やサービスの素晴らしさを再認識します。

日本のコンビニエンスストアでは、わすか数百円の買い物でも、手稲に袋に入れて持ちやすいように手渡してくれて、スピーディに会計をして、「ありがとうございました」を何回も連呼する。

また、正確な時間で整然と走っている電車や、駅や空港などのトイレの美しさ。電車が数分遅れただけで、「申し訳ございません」と謝罪を繰り返す車内アナウンス。

日本にいると極めて高いサービスを当たり前のように受けていることに気が付きます。

カンボジアには日本のODAによって作られた橋や道路のようなインフラがたくさんあるようです。それなのに、民間企業でカンボジアに進出している日本企業はまだあまり名前を聞いたことの無いような会社が多くあります。

不動産の視察をしても、建設しているディベロッパーには日本の企業は見当たらず、韓国系や中国系がほとんどです。援助に対してはカンボジアの人からは感謝されているようですが、ビジネスのオイシイところは海外の企業に持っていかれてしまっている。とてもお人好しな国に見えてしまうのです。

国内に入ってくる偏った海外情報、日本の技術とサービスの桁外れのレベルの高さ、職人気質で商売下手な日本……このような気づきは日本にいてはいつまでも感じることはできません。

今まで書いたような、私の見方も、私自身の思い込みや不完全な情報収集によってバイアスがかかっていると思います。しかし、国内で新聞やネットを見ているだけではなく、海外に出かけたり、様々な人の話を聞いたりする。そんな複数の視点を持つことによって、バイアスを少しずつニュートラルに戻していくことができるはずです。

世の中をニュートラルに見ることができれば、歪みを感じることができます。ビジネスや投資のチャンスを見つけるのが得意な人には、自分のモノサシで世の中を観察することで、自然に見えてくるものがあるのです。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年8月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。