経済状況をスッキリ見通せない秋が来る --- 岡本 裕明

アゴラ

サラリーマンの夏休みが終わり、今日から仕事モードに切り替わる人も多いことでしょう。欧米でも8月終わりはバカンスも終わり、家でゆっくりするなどレーバーホリディ明けの本格的な秋に向けた戦略に思いを巡らせている人も多いものです。

今年の秋に見込まれる大きな金融イベントは、アメリカでは金融の量的緩和離脱の時期、バーナンキ議長の後任、先送りしている債務上限問題の処理などでしょうか? 一方、日本はオリンピック開催地発表、消費税引き上げタイミングの決断、TPPが大きな影響を与えそうです。


大所高所的に見るとアメリカの国債は今後、確実に価格が下落する可能性を秘めているということでしょうか? 7月に日本と中国がアメリカの国債を大量に売却したというニュースが北米では駆け巡っていましたが日本では見かけなかったような気がします。債券を得意とするピムコも成績が悪化しています。

FRBの理事会があるのは9月、10月、12月の三回。バーナンキ議長の1月の退任を考え、新議長に嫌な仕事を押し付けたくないとすればバーナンキ議長自身が金融緩和からの離脱のスイッチを押すと考えるのがナチュラルでしょう。9月説がいまだ根強い見方ですがここに来てアメリカ経済回復のペースがやや落ちてきている気がします。指標の判断の仕方次第ですが、私は年の後半までずれ込むような気がしております。量的緩和離脱時期の先送りはドル安となるため、金相場はそれを見越しているのか、腰が非常に強くなっています。

私は予想屋ではないのでバーナンキ議長の後任をどうこう述べるつもりはないのですが、確か、ロンドンのブックメーカーではサマーズ氏がリードしていたと思います。仮に賭け事の予想通りならば国債価格は下がりますね。

日本ですが読みにくいのがオリンピックと消費税。オリンピックは有力候補地がない中での三つ巴とも言われており、消去法で開催地が決定するのではという気もします。日本はIOCへのロビー活動が弱いのではないかともどこかで読んだのですが、今の段階ではまったく予断を許さないという感じに見えます。

消費税ですが、これは安倍首相は相当頭の痛い、そして大きな判断を要する決断になると思います。ここに来て消費税上げについて国内からのネガティブなコメントが多数出てきており、海外勢の「消費税 上げられなければ 投資なし」という声との板ばさみになっています。思い出せば首相がロンドンで日本に投資をしてください、と満面の笑みで訴えたのは春でした。「騙された」と言われるのか、非常に注目されます。

一点だけコメントしておきます。過去の消費税引き上げ時にその直後から消費が低迷した、という統計的数字をもとに、「だから消費税を引き上げると消費が減退し、国内景気に悪影響がある」とすることがよくあるのですが、駆け込み需要で消費の先食いであったと見るべき部分も多く、一時的に1割、2割の売り上げ減は当然発生するものです。最近ではエコポイントや環境対応型の自動車への割引などが需要の先食いをした例であります。

これが意味するものは日本では消費する潜在的能力は高いのですが、「お徳感」を強く求める傾向があるために本当のことが見えにくくなっている可能性はあるのでしょう。

こう書いてくるとこの秋はとても読みにくい相場つきになる気がしております。野村證券は日経平均が年末18,000円にまでなると予想しているようですが、上記のファクターがすべて株価にプラスの結果になってもどうだろうか、と思っています。最大の懸念材料は「飽きられたアベノミクス」、「忘れられた異次元の金融緩和」であります。参議院選が終わってまた、昔の自民党のようになってしまうとすればそれは株価の下落が止まらなくなるということにもなります。ここからはしっかり日々の動きを捉え、よく考えていく必要がありそうですね。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年8月19日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。