発表された7月のFOMC議事録、エコノミストの見方は? --- 安田 佐和子

アゴラ

昨日発表された米国のFOMC議事録を振り返って……エコノミスト諸氏の見解をみてみましょう。

BNPパリバのジュリア・コロナド米国担当主席エコノミスト

今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録を受け、12月に買入縮小との当方の予想を据え置く。参加者は全般的に楽観的ながら、足元の米債利回り上昇に関して多くの懸念を示しており、以前より見通しへの自信が和らいでいた。FOMC参加者は経済指標次第というスタンスを崩しておらず、労働市場だけでなく金融市場の状況につき注視すべきだろう。

バークレイズのマイケル・ゲイピン米エコノミスト

FOMC議事録では、9月に買入を縮小するとの当方の予想を変更する材料はほとんど見当たらなかった。議事録自体は事前に政策を確約する内容ではなかった一方、9月の縮小観測を強めないと同時に9月の縮小が適切ではないとも指摘していない。明確化されていない部分に焦点をしぼると、2つのポイントがみえてくる。ひとつは、「多くの参加者」が金融政策への道筋に対する市場の期待に対し「我々の見方に沿っている」と判断していたこと。もうひとつに、バーナンキFRB議長が示した政策の道筋につき、「ほとんどの参加者が概して適切」と判断していたことが挙げられる。2つのポイントを踏まえると、失業率が7%が到達する時点で終了するかは議事録だけでは定かでないものの、FOMC参加者が市場の期待に満足していると考えられる。

以上の見解をみると、WSJ紙がこんな2つの記事を配信した理由が垣間見えるというものです。QE縮小を先送りてほしいことも、にじみ出てましたけどね・・。

融紙にとどまらず、全米発行部数でトップに君臨するとはご立派。

wsj

FOMC議事録では新たに、固定金利方式の翌日物リバースレポを導入する可能性を検討していたことが分かりました。

翌日物リバース・レポでは、FRBがプライマリーディーラー(米公認政府証券ディーラー)や大手マネー・マーケット・ファンド(MMF)に米国債を売却し、銀行システムから一時的に資金を吸収し翌日に買い戻します。銀行システムから一時的に資金を吸収しながら、プライマリーディーラーやMMFは利息を受け取るんです。

なぜ、こんな議論が展開されたかと申しますと。

JPモルガン・チェースのマイケル・フェローリ米国債主席エコノミストが、こんな推察を展開しておりました。

「ノンバンク、特に政府機関にとって超過準備金(IOER)の付利に相当するものだろう。GSEが資金調達する目的で発行する短期証券の金利を低水準に抑えることが可能となり、かつ取引の急増を抑制しうる。金融政策を長期的に正常化するにあたって潜在的な手段とされ、出口政策の一環というわけではない。当方の見方が正しければ、金融政策を巻き戻す段階でもFedのバランスシートおよび銀行システムには引き続き潤沢な超過準備が存在する見通しだ。」

ちなみにフェローリ氏、QE縮小は9月派です。

個人的には、こちらでお話したように12月の予想から9月に変更しました。でも、石橋を3度以上叩きそうなほど慎重なFedの動向をみてみますと、一筋縄で発表しない可能性があるのではないかと。例えば、9月に「まもなくQE縮小を開始する」とアナウンスしながら、「正式な実施は経済指標次第」とかね。ひとまず8月29日の米4~6月期GDP改定値、8月30日の米7月個人消費支出および所得、9月6日のFOMC声明文を見極め、仕上げはごろうじろ、ってとこでしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年8月22日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。