数年に一回くらいだか、「これは」と感じる出会いがある。
出会った瞬間に、分かるのですよね、そういう出会いは。相手は何かオーラを放っているようだ。ハッピーで温かいオーラを。
投資家の谷家さん、一緒に会社を立ち上げた出口との出会いも、まさにそういう感じだった。言葉に表せないのだが、「この人たちと仕事をしたいな。いや、きっと、するんだろうな」という予感。だって、何の仕事をするかも、まだ決まっていないのですよ。
藤井:岩瀬さんとは、以前からお知り合いだったのですか。
中田:GABAの社長と岩瀬は、米国のハーバードビジネススクールで学んだ先輩後輩なのですが、岩瀬が「御社のマーケ
ティング戦略は面白いので、担当者の話を聞かせてください」と訪ねてきたことがきっかけで、半年に一度くらい、私がマーケティングについて色々とアドバイ
スをするようになったんです。それで、初めて二人でご飯を食べに行った時、私が「実は会社を辞めることにしたんです」と話したら、「次はどこへ行くんです
か」と聞かれて。軽い気持ちで「特に決めていないんですけど、スターバックスもGABAも会社のロゴが緑だったから、次も緑のロゴの会社がいいかな」なん
て言ったら、岩瀬が「まだ誰にもお知らせしていないんですが、新しく立ち上げる会社のロゴ、緑なんです」って言うんですね。開業4ヵ月前のことですから、
当然私もロゴのことは知らなかったんですが。
藤井:すごい偶然ですね。というか、運命?(笑)中田:どうでしょう(笑)。ただ、岩瀬とは最初に会った時から、この人とはいつか一緒に仕事をするかもしれないな、と
いう予感はありました。会話をしていて面白いし、話題に発展性があるんです。彼に限らず、ライフネット生命で一緒に仕事をしている人たちは、みんな個性的
で面白いですよ。
少し前では、同年代の新聞記者のN氏。部屋に入って3分くらい話をしたときから、「あ、この人、好き」と思って、取材が終わってからすぐに、「今度ジャズを聴きに行きましょう!」と誘っていたくらい。その後、彼が担当した企画で雑誌の表紙にしてくれたり、新聞元旦号に大きく取り上げてくれたりと、公私にわたっていいお付き合いをさせて頂いています。
最近では、ずっと年上のおじさん名物編集者のH氏。新しい書籍企画は軒並みお断りしているのですが、この落語家のような空気感をもつ方には断ることができず、仕事以外でも、一緒に歌舞伎を観に行ったりと、ちょこちょこご飯に行ったりと、普通にお友達になってしまいました。50代後半のおじさんと。
そういえば、10年以上前だが、ビズリーチの南壮一郎と仲良くなったときもそんな感じだった。大勢のパーティで出会った翌朝、メールが来た。岩瀬さんとは同じ匂いがするから、俺たち絶対に仲良くなる気がする、と。その後、お互い、何かあったら真っ先に話をする、大親友になった。
そんな出会いはふっと現れ、ふっと消えていく。だから、感性にしたがって、力強く行動することでしか、そのワンチャンスをつかめない。それは単なる偶然ではなく、どこか運命的な流れに身を委ねつつ、能動的な行動を伴ってはじめて形になる。そうやって、これまでの人生を歩んできた。
これからも、相手が放つ空気を感じ取り、自分の心の声、ささやかな予感に耳を傾け、多くの人との出会いを、そのワンチャンスを、大切にしたいものだ。いや、そうする。人生の豊かさは、結局、素敵な人と過ごす時間によって決まるのだから。
編集部より:このブログは岩瀬大輔氏の「生命保険 立ち上げ日誌」2013年8月24日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方は岩瀬氏の公式ブログをご覧ください。