ウィーン市内で8月21日、オーストリアに居住するエジプトのコプト正教会関係者の記者会見が開かれたので出かけた。オーストリア全土に約4600人のコプト正教徒が住んでいる。エジプトでは人口の約10%がコプト正教徒で、同国最大の少数宗派だ。
▲コプト正教会関係者のウィーンでの記者会見(2013年8月21日)
記者会見の最初のテーマは「エジプト軍のモルシ大統領解任は軍クーデターか」だ。コプト正教徒代表は「モルシ大統領の解任は軍クーデターの定義に該当しない。軍クーデターは軍指導部が極秘に準備し、履行されるものだが、エジプトでは大統領解任前に200万人以上の国民が反政府デモをし、軍も政権に48時間の退任猶予期間を与えていた」と説明し、「エジプト国民は軍の行動を支持している。国民はモルシ政権に希望をもっていたが、モルシ大統領は偽善者だった」と指摘した。ちなみに、エジプトのコプト正教会の最高指導者タワドロス2世は先日、軍と暫定政権を支持表明している。
コプト代表は「ムスリム同砲団過激派がメンバーたちに殉教を呼びかけ、デモや殉教シーンを演出している」というのだ。
ビデオで子供の死体が映された。「同胞団過激派はエジプト軍の射殺で殺されたと主張し、そのビデオをメディア関係者に流したが、映っている子供はシリアの内戦で亡くなった子供だったことがビデオの分析結果で判明した」という。
次に、イスラム寺院の祈祷集会で突然、白い煙が出てきたシーンが映ったビデオが披露された。カタールの衛星放送アルジャジーラが「軍が集会中のイスラム信者たちに催涙ガスを投げ込んだ」と報道したシーンだ。実際は、催涙弾ガスではなく、単なる煙だった。「過激派がわざと煙を出し、それをアルジャジーラ放送が撮影したのだ」と説明。コプト派正教徒によると、「アルジャジーラ放送はムスリム同胞団の完全な広報担当となっている」という。そして「ムスリム同胞団はコプト派教会を襲撃し、イスラム教徒とキリスト教徒の対立を煽っている」と指摘した。
コプト代表は「メディア関係者は軍がムスリム同胞団メンバーを虐殺していると批判するが、事実ではない。過激派は殉教シーンを演出し、欧米社会に流しているのだ」と強調し、欧米メディア関係者に客観的な報道を要求した。
その上で、「ムスリム同胞団は欧米の民主主義を否定し、神の国建設を至上目的に暗躍している。同胞団は決してエジプトだけではない。ハマス、アルカイダなど世界のイスラム過激派グループの母体であり、メンバーたちに神の国建設の為に殉教を強いる国際テロ組織であることを忘れてはならない」と警告を発した。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年8月24日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。