自分の住む場所を世界から自分で選ぶという新しいライフスタイル --- 内藤 忍

アゴラ

少し前のテレビ番組で、日本の富裕層が日本を脱出して、ビジネスの機会を求めてシンガポールに移住している現状をレポートしていました。懸命に働く才能ある日本人を国を捨てるという切り口でネガティブにしか捉えようとしないステレオタイプでチープな内容に驚きました。


このように海外に移住するというと、すぐに「日本を捨てるのか」とか「売国奴」といった批判をする人がいます。しかし、自分がどこに住んでどんな生活をするのかは、その人の選択の自由です。仕事があるから住む、食事が美味しいから住む、住環境が良いから住む、ただ単に好きだから住む、そんな選択肢で選んでいるのが、たまたま海外だったのに過ぎないのです。

日本より魅力的な場所があれば、そこに住むのは「売国奴」でも何でもなく、単に自分のライフスタイルを最も高めてくれる場所だからに過ぎません。日本に生まれたら、一生日本に住むべきだという考え方自体が、既にズレていると思うのです。

本日発売になったクーリエ・ジャポンを読んでいると、世界のどこに住むかをニュートラルに考えて、自分で選ぶという生き方が日本人の間にも広がりつつあるのを感じます。

日本にこだわるのではなく、日本も選択肢の1つという位置づけです。

国と言うのは国民を縛り付ける存在ではなく、快適な住環境や安心できる治安、魅力的なインフラを提供することによって、多くの人に住んでもらうサービスを提供する存在になるべきです。

その提供されるサービスによって、世界の人たちが自分の住みたい場所を自由に選ぶようになれば、国家間の顧客獲得競争が始まります。魅力的な税制を提供する国、働きやすい環境を提供する国には優秀な労働者が集まってきて、その国は繁栄する。

国家にも住んでもらって税金を納めてもらう人をどのように確保していくかを競争という観点から考える戦略が求められるようになるのです。

クーリエ・ジャポンの39ページには海外のとある雑誌の選んだ暮らしやすい街ベスト20が掲載されていますが、その中に東京は4位、福岡は12位、京都は13位と日本の都市が3つもランクインしていました。

日本の都市は、交通やインフラ、治安などのポイントが高いという特徴があります。さらに国際化が進み、開かれた都市になれば人気が高まるはずです。

私が東京に住み続けているのは、仕事が東京にいないとできないからです。それに、日本には世界最高水準の食とホスピタリティがあります。日本から完全に離れる生活というのは現時点では考えることはできません。

でも、もし将来仕事の制約から解放されたらどんな選択肢になるのか。

観光で過去に行った上海、ニューヨークも、パリも、フィレンツエも、バルセロナも好きな街ですが、最近視察で出かけた、オースティン、プノンペン、ホーチミン、クアラルンプールといった街にも観光地には無い生活する場所としての魅力を感じます。

東京に住んでいて辛いのは春先に毎年悩まされる花粉症。そして、アジアで最も醜いのではないかと思う高温多湿の夏の気候です。

9か月は東京にいて、3か月は別の場所に暮らす。そんなライフスタイルを実現する方法を真剣に考えようと思いました。

ところで皆さんは、どこに住んで、どんな生活をしたいと思いますか?

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年8月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。