国連の潘基文事務総長の「悪い癖」 --- 長谷川 良

アゴラ

産経新聞電子版を読んでいると、「韓国を訪問中の国連の潘基文事務総長は26日、ソウルの韓国外務省で記者会見し、歴史認識問題をめぐり日本と中韓との対立が深刻化していることについて『日本政府と政治指導者は自らを深く顧みて、国際的な未来を見通すビジョンを持つことが必要だ』と述べ、日本政府に注文を付けた」という記事があった。


世界190カ国以上の加盟国から構成されている国連の事務畑のトップ、国連事務総長が日韓の「正しい歴史認識」問題で一方的な見解を表明すること自体、極めて異例なことだ。韓国に帰国中の発言であり、事務総長もついつい心が緩んだのではないか、といった憶測もできるが、事務総長には昔から「悪い癖」があった。日韓問題になると、自分の立場を忘れて感情に走ってしまうのだ。

潘基文事務総長が韓国の外交通商相時代の2005年、ブリュッセルの欧州議会を訪問し、その直後の記者会見で「欧州議会も小泉純一郎首相(当時)の靖国神社参拝を批判した」と発表したのだ。当時の韓国通信社の報道によれば、潘基文外相は欧州議員との会談後、「第2次世界大戦参戦国として日本軍の犠牲となった経験をもつ欧州の国民の視点から見ると、靖国神社参拝は受け入れられないという意見が多かった」と報告、「靖国参拝を問題化するのは韓国と中国だけ」といった麻生太郎外相(当時)の発言を一蹴している。

当方は当時、同相の発言の真偽を確認するため、北朝鮮を公式訪問(同年7月)した欧州連合(EU)の欧州議会朝鮮半島外交協議団団長のウルズラ・シュテンゼル欧州議会議員に電話をかけ、同外相の発言について聞いた。

同議員は、「韓国の潘外相との会談は非公式な性格のものだった。日本首相の靖国神社参拝が議題であったわけでもない。1人の記者が質問したので、欧州議員の誰かが答えただけに過ぎない。欧州議会が小泉首相の靖国神社訪問を正式に批判したという発言は過剰な表現であり、事実とは異なっている」と答えたのだ。すなわち、韓国外相の発言は政治的意図を含んだ一方的な解釈であり、事実ではなかったことが明らかになったわけだ。

一国の外相の立場にありながら、日本との「正しい歴史認識」問題では事実を正しく報告せず、国内世論に迎合する虚偽発言を平気でできるのだ。残念ながら、国連事務総長になってもその「悪い癖」は治っていない。その意味で、事務総長の韓国での問題発言は驚くに値しないわけだ。

未来志向的な隣国関係を提唱してきた李明博前大統領が任期満期間際に突然、竹島を訪問し、醜態を示したように、韓国の政治家、外交官には日本との問題となると途端に自制心を失い、感情に走る「悪い癖」がある。国連事務総長はその代表的な人物だ。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年8月27日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。