「誰と付き合うか」でなく、「誰と付き合わないか」を考える --- 内藤 忍

アゴラ

今年から資産デザイン研究所の代表として仕事をするようになり、金融業界だけではなく、今までお会いしたことの無いようなジャンルの方ともお付き合いの機会が増えました。年初に新しく作った1000枚の名刺がまもなく無くなりそうですから、その数約1000人。1日4人の新しい方とお会いしている計算になります。その中から、たくさんの素敵な出会いもあり、ビジネスにプライベートにお付き合いが広がっているのは本当にありがたいことです。

しかし、一方で尊敬する一部上場企業の創業社長さんから、以前こんなことを言われたのを思い出しました。

「誰と付き合うかより、誰と付き合わないかの方が重要だ」


たくさんの素晴らしい人たちとお付き合いを広げても、たった一人の付き合ってはいけない人と出会ってしまうと、すべてが帳消しになってしまう。そんな経営者としてのアドバイスです。

確かに誰が信用でき、誰が信用できないかは、ビジネスでもプライベートでも判断を完璧にするのは難しいことです。確率的に言えば、多くの人とコンタクトすれば、その分付き合ってはいけない人に出合う可能性も高まります。

幸い今まで30年近く社会人として仕事をしてきましたが、裏切られたり、騙されたりといった経験をしたことはありません。しかし、変化の激しい世の中になり、多くの人と短時間にお会いすることが多くなると、トラブルに巻き込まれるリスクも高まると思います。

資産運用で一番基本となる考え方は「ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターン」というものです。リスクを取らなければリターンはありませんが、リターンを追い求めるあまりリスクを取り過ぎてはいけないということです。ここで重要なのは、身の丈に合ったリスクと取るということ。

人間関係もそれと似たところがあります。

誰とでも無防備に付き合ってしまえば、大きなダメージを被る可能性がある。しかし、トラブルに巻き込まれるリスクを恐れる余り、疑心暗鬼になって誰とも付き合わないのでは、人生の醍醐味は無くなってしまいます。

車の運転で言えば、アクセルとブレーキのコントロールのようなものを自分自身の判断と責任でしていかなければならないのです。

どちらかと言うと、今年に入ってからはアクセルをふかして、出来るだけ多くの人とお会いし、少しでも可能性を広げようという傾向が強かったように思います。しかし、スピードの出しすぎは、注意力を散漫にし、危険を高めるという側面もあるのです。

投資において身の丈に合ったリスクを知るのが難しいのと同じように、人とのお付き合いでも自分がどのように行動すれば良いのかを適切に判断するのは難しいものです。

とは言え夏から秋への季節の変わり目。そろそろ、これまでの数か月を振り返って、ブレーキの使い方も考えてみたいと思います。

(何か特別な出来事があった訳ではありませんので念のため)

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年8月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。