原子力発電が大気汚染による死を防ぐ--40年で184万人

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GEPR編集部

原子力発電は、多くの問題を抱える。そして福島第一原発事故は収束の見通しが立たない。しかし、一方で、原子力にはメリットが応分にあるからこそ、これまで各国で使われてきた。


NASA(米航空宇宙局)ゴッダード宇宙研究所およびコロンビア大学地球研究所は、このほど米化学学会機関誌「Environmental Science and Technology」47号(2013年)で、「従来および予測される原子力により防がれた死亡者数および温室効果ガスの排出」という論文を掲載した。(英語全文)執筆者はプシュカ・A・カレチャ、ジャームズ・E・ハンセンの両氏。

ハンセン氏は、かつてはNASA、現在はコロンビア大学で研究する惑星物理学者。米国で温暖化に警鐘をならし続ける研究者として知られている。

ハンセン氏は温暖化対策、またエネルギー枯渇対策で、原子力の活用を、選択肢の一つとしている。原発は化石燃料を使わず、大気汚染物質や、CO2を排出しない。論文では、71年から09年までの累計で、184万人の大気汚染による死亡、64ギガトンのCO2の排出が抑制されたと推計している。ちなみに、ギガトンは10億トンであり、地球全体の年間のCO2排出量は2010年で20万ギガトン、日本は1・1万ギガトンとされる。

現在、米国ではグリーンエネルギーのてこ入れ策に成果が上がっていない。そして温室効果ガスの国際枠組み交渉が始まっている。オバマ大統領は、シェールガス革命を背景に、天然ガス利用振興策を打ち出している。この論文は推計を伝えるのみだが、ハンセン氏は、その政策をCO2排出の加速と、大気汚染の観点から批判している。この論文を含め、ハンセン氏らの一連の主張は、米国で社会的に注目を集めている

以下、論文要約を和訳掲載する。

要約:
2011年3月の福島第一原子力発電所事故の余波により、今後の世界的エネルギー供給への原子力の貢献は幾分不確かなものとなった。原子力は潤沢で低炭素のベースロード電源であるため、世界的な気候変動と大気汚染緩和に大きな貢献をすることができるものだ。過去の生産データを用いた我々の計算では、地球の原子力は平均(編集注・いくつかの推計の平均という意味)して、化石燃料燃焼した場合の大気汚染に関連した184万人の死、そして、二酸化炭素換算64ギガトン(GtCO2-eq)の温室効果ガス排出を防止した。福島事故を考慮した世界的な投影データに基づいて、どの化石燃料におきかえられるかにもよるが、今世紀半ばまでに原子力はさらに化石燃料による平均42万~104万の死および80~240GtCO2-eqの排出を防止することができることがわかった。対照的に我々は、制約のない天然ガス使用の大規模な拡大は気候問題緩和にはならず、原子力の利用拡大よりもはるかに多くの死をもたらすと評価する。

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