いよいよシリアで戦争が始まりそうだ。アメリカの爆撃そのものは限定的だというが、そのままシリアが黙っているはずがない。アメリカに報復することはできないので、ありそうなのはイスラエルに化学兵器で爆撃することだろう。それに対してイスラエルがシリアに報復する(今までも何度か爆撃している)ことはほぼ確実だ。
そこで終わればいいが、イランはかねてからシリアの同盟国であることを強調しており、シリアが一方的に攻撃される展開になったとき、イスラエルを援護爆撃するかもしれない。そうなるとイスラエルがイランの核施設を爆撃し、それに対抗してイランがホルムズ海峡を機雷封鎖すると、日本への原油輸入の8割が止まるばかりでなく、70年代のような原油価格の暴騰が起こるだろう。
70年代の通貨供給と物価上昇率(%)出所:日銀
しかし当時、小宮隆太郎氏が批判したように、1973年の「狂乱物価」の主犯はOPECではなく日銀だった。図のように、第4次中東戦争の起こる1973年10月の前から10%を超えるインフレになっており、OPECは金余りに火をつけただけだ。日銀が40%を超える異常な金融緩和をしたのは、田中内閣の「日本列島改造」と、1971年の「ニクソン・ショック」後の円高を抑えるための調整インフレだった。
1979年の第2次石油危機のときは、日銀が迅速に引き締めたため、物価は8%しか上がらなかった。このときも世界的には2倍を超えるインフレになって英米経済は疲弊したが、日本は石油危機からいち早く立ち直って低燃費の小型車が爆発的に売れるようになり、日本経済が世界のナンバーワンといわれるようになったのだ。
この経験から考えると、170兆円以上のマネタリーベースが「ブタ積み」になっている現状は、日本経済にガソリンが充満しているようなものだ。小黒一正氏の計算のように貨幣乗数(マネーストック/マネタリーベース)が12ぐらいだとすると、インフレの火がつくと約2000兆円のマネーストックが市中に出る。これは名目GDPの4倍なので、400%のインフレになるおそれがあるある(日本は70年代に200%になった)。
ここ半年の実験で、黒田総裁の「念力」はきかないことがわかったのだから、もう有害無益な「異次元緩和」はやめ、資金を回収すべきだ。そうしないと、また狂乱物価が起きたら国民生活はめちゃくちゃになり、安倍内閣も倒れるだろう。下らない増税論議はもう打ち切り、中東の非常事態にそなえて原発の再稼働を急ぐべきだ。