野球より面白いDeNA社のサイト

新田 哲史

この週末、飯田カオリンの結婚ネタ連発して書いたら、BLOGOSのFacebookページで「この平和ボケ野郎」とクソジジイに罵倒されたので、週明けは「倍返しだ!」とばかりに、ちょっと本気を出してみるぞ。ジャーナリズムと企業広報の世界を往来した人間として、いま特に注目しているのが、「ブランドコンテンツ」と呼ばれる、ウェブメディアの新しい広告発信の手法だ。


※東洋経済オンラインでスタートしたブランドコンテンツ記事
130902東洋経済

●ブランドコンテンツって何?
ざくっと言うと、企業広告の一環で作られる企画記事なのだが、従来の広告記事と違うのは、いたずらに新商品の宣伝とか短期的な広告効果を狙ったものではなく、企業の経営哲学や社会観に裏打ちされたジャーナリスティックなコンテンツをお届けし、ブランディングする中長期的な視点の取り組みである。ビジネスサイト間の競争で独走態勢に入りつつある東洋経済オンラインが、先週さっそくサイボウズ社とのコラボで企画をスタート。佐々木編集長、さすが手回しが早い。件の記事では、ジャーナリストの白河桃子さんと、男性学が専門の田中俊之・武蔵大助教が「働き方」をテーマに対談している。ブランドコンテンツのあらましの詳細や、この記事の企画の狙いについては同社関連サイトにあるのでご参照いただきたい。

さて、ブランドコンテンツは、東洋経済オンラインのようなニュースサイト、つまりトリプルメディアで言うところのアーンド(第三者)メディアだけの発信ではない。ウェブマーケティングの先進国であるアメリカではオウンド(自社)メディアからの取り組みが盛んだ。発信されるコンテンツでは、自社や商品のことを直接的には表現せず、まるで雑誌記事を読んでいるような感覚で読み手を楽しませることに主眼を置いている。イケダハヤトさんが3年前に取り上げ、既に死語と化しているが、こうしたコンテンツ生成について、ごく一部では「ブランドジャーナリズム」と呼びならわす時期もあった。

●雑誌みたいなDeNA社のサイト
それで本日の見出しのDeNA社である。お待たせしました。同社のサイトといってもソシャゲーの方ではなく、コーポレートサイトを見ていただきたい。写真がふんだんに使われ、新聞社のニュースサイトよりも実にビジュアライズされている。競合のグリーのコーポレートサイトと比較してみても、いかに際立っているか分かるだろう。デザインも今風の柔らかさ。筆者は最近まで同社のサイトにアクセスした経験はなく、いつ頃からこういう雑誌的な編集になったのか知らなかったのだが、友人の南壮一郎・ビズリーチ社長が、南場のおばちゃんと対談した記事が載ったのを機に初めて訪れてビビった次第。本編の記事自体も興味はあったが、記事を彩るデザインも相当エッジが効いている。いやはや、ベイスターズの試合よりもサプライズ度は高かった(笑)

※鮮やかなビジュアルのDeNAのコーポレートサイト
130902DeNA

全体の記事の中で、ブランドコンテンツと言えるものはまだ月1回程度の配信のようだが(7月はオバちゃんと藤田晋さんの対談)、たとえば、同社陸上部所属のケニア代表カロキ選手の記事、ドキュメンタリーの読み物なんかも出るようになると、サイト全体のブランディングが進み、ファンも増えそうだ。

●新聞社から人材移転は進む?
さて、問題は書き手の確保である。
実は、かつてブランドジャーナリズムという言葉が躍り出た背景には、アメリカの企業でジャーナリストや編集者出身者を雇ってコンテンツ制作を行ったモデルケースがあったからだ。ブランドコンテンツに力を入れる企業は日本でも増えるだろうが、読み手を唸らせる筆致や、登場人物の本音やとっておきのエピソードを引き出す取材術などに長じたプロのノウハウへのニーズも出てくるだろう。じり貧経営が続くアノ新聞社や、早期退職者を募ったはいいが優秀な記者が流出しているコノ新聞社あたりから人材が流れるかも注目している。密かに期待している人も多かったりして(苦笑)
いや、ぶっちゃけ話、そういう筆者自身もブランドコンテンツ事業をやってみたいとも思っております。はい。

ただ、記者の民間企業への人材移転には様々なハードルがあるし、ブランドコンテンツ事業も悪用されればステマになりかねない倫理的リスクもはらんでいる。そこら辺の課題については、また追々書いていきたいと思います。

ではでは、あのクソジジイに中指を立てつつ、今週も締まっていきたいと思います。
そんなところで。ちゃおー(^-^ゞ

【お断り】DeNA誉めたけど、ソシャゲーはやらないし利害関係は何もありません。一応。

新田 哲史
Q branch
ぶっちゃけ、仕事オファー来ないかなと思っている
広報コンサルタント/コラムニスト
個人ブログ