辻元さん、最終的に僕の意見に同意いただきありがとうございました。議論が錯綜した原因はいくつかありますが、デジタル教科書を配布する対象について認識が異なっていたのが一つです。僕らは、小学校・中学校での導入を主張しているのですが、辻さんは「社会で必要とされる学力」を与えるのには適していないのではないか、という観点で語られていました。
辻さんの記事にもすでに引用されていますが、僕らが考えるデジタル教科書のイメージを繰り返します: デジタル教科書は、ワンクリックで視聴覚教材やドリルにジャンプする、教科書と教材が混載されたコンテンツである。例を挙げれば、英語なら文章をクリックするとネイティブの音声が流れるもの、理科なら卵からカエルまでの成長過程を短い動画で提示するもの、算数なら四則演算のドリルが組み込まれたものである。
視聴覚教材やドリルが初等・中等教育で効果的なことについては、どうぞ、日本教育メディア学会の論文誌等、数多くの研究論文をご覧ください。それらの中には、きちんと統計的に効果があることを示した論文も存在します。デジタル教科書は全く新規なものではなく、視聴覚教材やドリルを統合したものですので、大規模な実証実験など不要だとぼくらは主張しているのです。
しかし、それを教育の中でどのように活用するかについては、まだ模索が続いている状況です。教員からの語り掛けや板書、ノートへの書き取りなどとどう組み合わせればよいのか、教育学の先生方が研究をされています。日本デジタル教科書学会の設立趣旨が実践方法を強調しているのは、そのためです。辻さんは、PCに安易に依存する教育は適切ではないと主張されていますが、これもまさに実践方法に関わる指摘で、僕も議論を深めることに賛成です。
なお、武雄市での実証結果などをお示ししたところ、辻さんは1クラスの結果に過ぎないと切り捨てられましたが、辻さんが頼りにされている韓国での結果も、わずか99名の教員を対象としたアンケート調査に過ぎません。僕らに統計的に実証するように求めるのであれば、韓国を引用するのは不適切です。
山田肇 -東洋大学経済学部-