家電御三家の一角であるシャープがその座から陥落し、日本の家電は全滅か、と騒がれたピークは1年ぐらい前だったでしょうか? それを受け、ソニー、パナソニック、シャープはそれぞれまったく違う復活路線の計画を策定し、独自のレールを走り始めました。
その中でシャープについては前経営陣の判断ミスが繋がり、その回復計画には疑問符が何度もついたのは記憶に新しいかと思います。事実、私もこのブログではシャープについてはたびたび厳しいコメントを提示してきたと思います。特に台湾の鴻海との経営提携話が出た2012年3月下旬、それは間違いと指摘し、その後もたびたびその点を強調してきました。結果としてそうなったのか、あるいはそのような声があちらこちらから伝わったのか、鴻海との提携話は現時点ではほぼなさそうな感じとなりました。
ただ、途中の迷走の中で株主資本が極度に低迷する中、出資者募りに於いて、前経営陣が再び、お手つき的な行動に出たことは将来の同社の再生に多少影響を与えるかもしれません。ですが、この会社に私は希望の光が見えてきた気がしております。
それは今日にも会見にて発表される中間決算の連結営業黒字見込みが想定利益の2倍となりそうなことと懸案事項であった資本増強において1500億円の公募と200億円の第三者割当の合計1700億円程度を調達する見込みができたことであります。公募に関してはその株式の希薄化が37%にも達するため、発表と同時に株式が大きく売られましたが正直、これはミクロ的目線であり、会社の健全性を考えれば正しい公募だと信じております。
むしろ1年前には想像も出来ないようなこれだけの大型公募が出来るほど会社の体力が回復しつつあるという点を評価すべきでしょう。エレメント別では新型iPhone向けなど中小液晶などを本業が好調な上に、太陽電池パネル、エアコンなども伸びたとのことでいわゆる「一本足打法」と揶揄された液晶オンリーの体質から抜け出しつつあることがポイントかと思います。
そういえば日経ビジネスで毎年行われるアフターサービスランキングにおいて本年度、シャープがスマホ・タブレット部門、エアコン部門、薄型テレビの三部門においてトップを飾っているのですが、紙面においてほとんど記事になっていないところに奇妙な感がありました。シャープは歴年、アフターサービスにおいて高い評価を得ておりますが、経営が悪化した今でも主要部門において堂々トップを維持しているということは大いに注目すべき事項だと思います。それは社員が腐らずに頑張っているという証そのものなのです。
日本の家電が生き延びる道は難しいと言われました。が、私はあえて違う表現をします。難しいのではなく、新たなる時代に入った中でその環境変化についていけるのか、ではないかと。
シャープについては垂直経営による圧倒的支配力を標榜したのですが、これが時代の変化に逆らう格好となりました。うねる時代にはしなやかに、そしていつでも退散できるエスケーププランが必要にもかかわらず、一本足が倒れたらそれでおしまい的な博打経営だったといえるのです。
それはシャープに限らず、多くの日本の大企業が銀行主導の「本業回帰」路線を踏襲したことでバブル後の低成長に「釘付け」にされたといっても過言ではありません。ですが、シャープはその呪縛に気がつき、必死に逃れようとしているという表現がご理解いただけるのでしょうか? いまや、本業大好きの銀行ですら、消費者金融から海外事業まで幅広くこなしているわけでいつの間にか、「君たちはいつ態度を変えたのかね?」と聞きたくなるほど手のひらを返され、残されたのは日本の老舗企業だったということになりかねませんね。
今日はこのぐらいにしておきましょうか。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年9月18日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。