IAEA年次総会で山本一太科技相が奮闘 --- 長谷川 良

アゴラ

ウィーンの本部で9月16日から国際原子力機関(IAEA)第57回年次総会が開催中だが、日本からは山本一太科学技術相が出席し、総会初日の16日午前、3番目のスピーカーとして基調演説を行った。

山本科学技術相は力強い声で15分余り英語で演説をした。年次総会に参加した日本の大臣が英語で演説すること事態、非常に希なことだ。小さな驚きを感じながら傾聴した。
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▲記者会見に臨む山本一太科技相(2013年9月16日、撮影)


同日午後、山本氏はIAEA記者団への記者会見を開き、質疑応答にも主導権を発揮しながらテキパキと答えた。大臣にはも申し訳ないが、当方は大臣の略歴を知らなかったが、「すごく元気のいい大臣だな」という印象を受けた。大臣としては若手の閣僚に属するのだろう。

東京電力福島第1原発事故では汚染水問題が欧州でも大きく報道されている。山本氏はそれを意識し、今回、安倍政権の汚染水対策を国際社会に向かって発信したいという意欲に溢れていたのだろう。

同氏は「昨年はIAEA年次総会に閣僚が派遣されませんでしたが、今年の総会は重要だという判断から、私が参加することになりました」と、ウィーンの総会参加の背景を説明した後、「私の午前の演説には2つのポイントがありました。一つは安倍政権が昨年12月発足した後、日本のエネルギー政策の見直しが行われたということです。前政権の原発ゼロ政策からの見直しです。2つ目は汚染水問題に対する安倍政権の対策を説明することです」と強調した。

欧州でも懸念されている汚染水問題について、「原発周辺0・3平方km内では放射線量は基準を上回っているが、その湾港外では放射線量の増加は検出されていない。食糧や飲料水にまったく問題ありません。安倍政権は今月3日、汚染水対策で政府が積極的に取り組む基本方針を決定しました。天野事務局長と会談し、日本政府の汚染水対策を報告しました。理解されたと確信します」と一気に説明した。

汚染水問題では東電関係者と政府間で見解の相違があるのではないか、との質問に対して、「政府は汚染水が外洋に流れ出さないように努力しているところです。外洋を含め汚染水はトータルで問題がないという認識です」という。

山本氏の発言の中で最も印象深かったのは、「日本政府は今後、国際社会に的確に情報を発信しなければならないと痛感しています」ということだ。風説やデマ中傷情報を阻止するためにも、日本側の積極的な情報発信が求められているわけだ。

普段は批判的で、些細なことを根掘り葉掘り聞く記者たちも大臣の勢いに圧倒されたのか、意地悪な質問も飛び出さず、25分余りで記者会見は終わった。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年9月18日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。