アメリカ「行政不安」の真相を探る --- 岡本 裕明

アゴラ

2014年の暫定予算が通っていないアメリカでは民主、共和党の溝はまったく埋まる気配がない状況になってきています。メディアのトーンも2週間は無理とか、更にしばらく続くといった見方が増えてきていますが、その間に債務上限問題の瀬戸際も来週に迫ってくるかと思います。現状、アメリカの国債の発行高は議会で規定するほぼ上限となっており、政府支出の重要な収入源である国債が発行できなければ国家予算は「ない袖は振れない」という深刻な事態に陥ります。

そしてそのXディは10月17日頃とされています。


オバマ大統領は海外での予定をキャンセルしてこの交渉に当たるとしていますが、不安感を感じるのはオバマ大統領になってからこの手の問題が頻発しているということであります。暫定予算のほうの最大の問題はオバマケアでありますが、共和党の一部の議員の反発は根強く、共和党そのものがまとめ切れていないというのが現状ではないでしょうか?

なぜオバマ大統領になってからうまくまとまらないのか、と考えた時、アメリカ国内の微妙な分裂があるのかもしれません。民主党の支持層にはアジア、アフリカなどの移民層も多く、また、「99%」に属する人たちにも民主を支持するひとが多いのは納得できます。要は多数の庶民が不安定な生活から脱出したいと望んでいるということでしょうか。

一方アメリカの景気は徐々に回復傾向があり、2008年のリーマン・ショック時のあの衝撃は過去のものへとなりつつあります。金融緩和でより格差が広がったとされる中で「現金なひと」も現れきているのかもしれません。

共和党の頑固な一派、ティーパーティーはその中でも白人主体の原理主義的な発想がその根底にあるとすればそこには「ひとつのアメリカ」はもはや存在しないことになります。

メディアの一部には一連の暫定予算問題、債務上限問題が仮に暗礁に乗り上げればアメリカの信用は地に落ちるとしています。アメリカ財務省は国債は急落し、基軸通貨ドルの与える世界経済への影響は果てしなくそれはリーマン・ショックより深刻としています。ただ、私にはこれはポジショントークに聞こえます。国債が急落するかどうか、あるいはドルが暴落するか、これはわかりませんが(国債価格ほど世の中の予想を裏切り続けているものはありません)所詮、債務上限は議会が歯止めを設けただけの話で日本に比べればGDP比ではるかに良好です。国債がバンバン発行されている日本よりアメリカは健全であることは間違いありません。

つまり、議会さえコントロールできればすべて解決する問題であってアメリカ財務省がそこまで言うのは議会にプレッシャーを与えるつもりなのだろうと思います。が、むしろ、市場や一般社会にあらぬ不安を掻き立てる結果になってきています。つまり下手を打ったということでしょか?

あるニュースにオバマ大統領はカリスマ性がないと書かれています。あれだけの国を抑えるのは非常に難しいのはわかりますが、氏のポリシーが中庸であり、明白なラインが見当たらないことも不人気に繋がっているのかもしれません。

共和党のベイナー下院議長が事の重大さを認識した上で全力を尽くし(党内の調整をする)旨の発言をしているようです。力のある野党の内部分裂が与党の政治力を抑え込んでいるというのが現状でしょうか?

個人的には国債のディフォルトには追い込まず、来週にも何らかの妥協が見出せるのではないかとみていますが。

さてさて、どうなることやら。アメリカのドラマはいつも壮大なスケールであります。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年10月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。