最近、小泉元総理が脱原発で露出しだしたために、脱原発が喧しくなった。去年の衆議院選挙、今年の参議院選挙といい脱原発を政策の目玉にする政党があるが、筆者にはその神経を理解できない。
原発はただの道具にすぎない。道具の選択には、判断の根拠に現実的で具体的な技術的裏づけが必要なので、高度な専門家抜きに語ることはできない。政治家は素人なので、政治家だけでは、道具の良否を談じることはできない。まずは、脱原発で目指す社会といったビジョンを明確にしてほしい。ところが、これらの政党が掲げるビジョンがはっきりしない。はっきりしない以上、脱原発で実現できるのかもよく分からない。
脱原発で実現するビジョンがよくわからないので、脱原発を強調する人たちも困っているのではないか。脱原発派の特徴は、福島事故から3年近く経過し多くのことがわかってきたにも関わらず、それらが殆ど主張に反映されていないことである。理由は簡単である。原発は難しく、これらの新たな技術情報は専門家でないと簡単には活用できない。ビジョンのような技術情報以外の情報が不足しているからである。
原発は、核、熱、化学、物性等の多くの要素技術が複雑に絡み合った複合体である。これらの全てに精通している人はいない。断っておくが、原発の専門家は、素人レベルでは全てに精通している。プロレベルで見ると、核の専門家は熱分野では素人に近く、その逆も然りである。
原発に限らず巨大技術は、どれも似たようなものである。また、原発は電力システムの一部にすぎない。電力系統制御では、原発の専門家も素人同然である。このような特徴から、脱原発を強調する人達も全ては把握できていないが、専門性の強い「筋金入り」と素人の「単なる物好き」の2つに分けられよう。
「筋金入り」は、専門性は高い反面得意分野も限られる。事故以前から、来るべき日に備えて入念な検討をしてきている。事故直後は、己の精緻な想定で大活躍できる。しかし、事故後多くの情報が入ってくると、問題は自分の得意分野のみで生じるわけではなく、得意分野でも想定通りに事故が進展するはずもないことがわかってくる。入念な準備が障害となり袋小路に陥りやすい。
また、「筋金入り」は基本的に一匹狼的活動をするので、他分野との連携も難しく、ますます袋小路に陥りやすい。しかし、易々と自説を翻すような軟弱者ではない。だから「筋金入り」である。したがって、事故直後に比べると、露出度は少なくなっているように感じる。
「単なる物好き」も、「筋金入り」と似たようなものであるが、入念な準備が無く専門知識が0であることが異なる。情報は殆ど「筋金入り」に頼っているので、事故直後は「筋金入り」と同様に露出度が高い。当局から新しい情報が提供されても「筋金入り」が行き詰れば、当然行き詰ってくる。
これは、原発だけではなく電力自由化や発送電分離のような電力システムにも言える。事故直後は1万KWの発電機を100台並べれば、原発一基分になる程度の感覚でもなんとかなった。50年後の話ならそれでもよい。しかし、大飯原発再稼動のような、系統連携が問題になる極めて現実的な話題になると馬脚を表す。
発電と送電は、制度的には分離できるが、物理的には極めて難しい。制度分離でも電力工学以外に、ファイナンスや金融工学も必要となる。筆者も、かつてエンロンのカミンスキ博士と議論したことがある。議論が本格化する前にエンロンは倒産した。惜しいことをした。カミンスキ博士の連絡先を知っている人は、是非とも教えて欲しい。
従来の発送電の物理形態は、マッドサイエンティストの元祖、怪物テスラの画期的発明、変圧器に負うところが大きい。発送電の物理形態を変えるには、怪物テスラに匹敵する大天才を俟たなければならないのではないか。
段々難しくなってくるので、賢い人は原発や電力システムから早々に撤退して、TPP、消費税増税、アベノミクス等の自分の手に負えそうな話題に切り替える。原発では十分に元はとっただろうから、賢い選択である。今でも、原発に拘るのは、原発以外の材料がないからであろう。これでは、立派な「原子力ムラ」の住民である。
最近の公式発表は精緻なものになっている。「単なる物好き」が適確に把握するには、最低、原子炉主任者や放射線取扱主任者の試験合格くらいはしていないと始まらない。とても無理なので、自分のホームページで鬱憤を晴らす程度で済んでいるようだ。
ただし、例外もある。まずは山本太郎議員である。事故後3年近く経過しても「単なる物好き」程度で国会議員になるから、テスラ並みの怪人かと期待していたが、放射能どころか天皇の国事行為もしらない普通の人だとわかり、失望した。
次に、小泉純一郎元首相である。彼は、「変人」扱いだから、怪人テスラ並かもしれない。期待できる。小泉元首相は大勢が決まった段階で出馬されるのは、流石に大物である。ご自分でも勉強されたそうだが、素人の独学は逆効果である。政治家ならば、原発の専門家を家庭教師にし、その専門家をブレーンとして宣伝する方が活動の幅が広がる。経済問題では皆そうしている。
小泉元首相ほどの人物に影響を与えたブレーンをぜひ紹介して欲しい。「原子力ムラ」の住民も、まずはその専門家に謙虚に耳を傾けるべきである。11月12日の午後に、小泉元首相が日本記者クラブで会見されるそうである。参加できる記者さんには、ブレーンが誰か質問して欲しい。
脱原発を強調される大物としては、山本太郎議員、小泉元総理、菅直人元総理、渡辺党首、小沢党首など、10人近くになるであろう。彼らが、本当に脱原発したければ、僭越ながらもっと簡単な方法をお伝えしたい。
今、東証株価指数(TOPIX)が1200で頭打ちになって、筆者を含め皆困っている。原因の一つは、時価総額の大きい銘柄の信用倍率が異常に高いことにある。彼らの支援者のそれぞれ1万人、合計10万人ほどに、それぞれ1億円拠出してもらえば10兆円になる。それを保証金にすれば30兆円程度の信用売買が可能である。
これで信用買残を解消し弾みがつけば、TOPIXも2000から3000になるかもしれない。日経平均も2万円から3万5千円程度にならざるを得ない。それと平仄を合わせて脱原発を主張し明るい未来を喧伝すれば、脱原発は国民の絶大な支持を得る。勿論、筆者も支持する。しかし、原発再稼動前に実行しないと、株価上昇は原発が原因となりかねない。筆者としては、どちらでもよいが。
これら大物の支援者も思いは同じであろうから、知恵の無さを嘆かずに金だけを出せばよい。今の状況では、暴利は貪れても大損することはまずないだろう。何故、やらないのか不思議である。
植之原 雄二
無職(デイトレーダー)