世田谷でradikoが止まった

池田 信夫

引っ越しのとき、ラジオのアンテナにつなぐのが面倒なので、FMチューナーを捨ててradikoで聞いていたが、きょう図のようなエラーが出てすべての配信が止まった。とうとう世田谷区も、在京放送局の「サービス地域外」になったのだろうか。

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もちろん、そうではない。radikoは送信要求のあったルータのIPアドレスをサーバ側のデータベースと照合して地域外のルータへの配信を拒否するシステムなので、こういう誤認はよくあるようだ。こんな馬鹿なシステムで放送しているのは、世界でも日本だけの怪現象だ。

ラジオは帯域を食わないので、インターネットで同時配信するのは容易で、iTunes Radioでは世界の数百局のラジオ局が聞ける。日本のローカル局も、その気になれば世界に情報を発信して競争できるのだが、実態は在京局の番組の垂れ流しなので、全国エリアにすると地元から広告が出稿されなくなる。

そこで電通が音頭を取って、放送エリア外からの送信要求を拒否する画期的な技術を開発した。これはJ-CASTが特許をもっており、この特許料のおかげでJ-CASTは黒字になったという。これは地デジがネット配信を「放送エリア内」に限っているのと同じだ。

震災のときは、被災地のラジオが聞こえなくなって他の地域からの情報が必要なのに、この制限をかけていたので、私が3月13日にツイッターで文化放送に「radikoの制限を解除しろ」と言ったら、その直後に解除されたが、半年後に元に戻された。radikoは災害報道というラジオのもっとも重要な機能を阻害しているのだ。

radikoは、日本がだめになるメカニズムを典型的に示している。インターネットでビジネスチャンスが広がったのに「既得権がおかされる」と受け止め、電波利権を守るために多大なエネルギーを費やして、国境のないインターネットに県境をつくって自縄自縛になる。ネット販売を拒否する薬剤師会と同じだ。バカは死ななきゃ直らない。