税制に関して ~ 軽減税率は利権そのものだから辞めた方が良いと思う --- うさみ のりや

アゴラ

来年の4月から消費税が8%になることが確定的となりまして消費税に関する議論は「平成27年に消費税を10%にする際に軽減税率を導入するか?」という点に移っております。私自身としては歳入を増やすために増税することには反対で、消費増税は他の税制とのバランスも含めて、社会構造の変化を踏まえて税収を維持・平準化するにはどうするべきか、という観点で考えられるべきと思っております。経済成長無しに、歳入を増加することは無理筋でしょう。脱税が増えるだけです。

現状の政府の赤字はちょっとやそっと消費税を上げたところで解消される問題ではないので、消費増税も人間90年生きるようになって会社で働いた後に年金や資産運用で食べていく人が増え、かたや労働者人口が減るだろうという時代に、どのように広く国民に負担を求めるかという問題の一貫と考えております。つまり「消費増税のメリットは、現役を引退して年金や資産で暮らしている人から取れるお金が増える」というところにあるのかなと。その意味では証券優遇税制の廃止や法人税の減税(法人税は現役層から引退層への所得移転とも考えられる)などとセットで考えていく問題なのかなと。他方でベンチャー投資に対して大幅な減税措置をなされることは、資産家に高齢者層が多くその資産管理を法人という形で代替して行われているという前提で考えれば(要は金持ちの中堅企業の社長のような人は節税目的で会社の口座にお金を残しておくということ)、世代間の富の移転の意味も含めよいことではなかろうかと。税制はGDPよりもGNIベースで考えられるべきということですかね。日本の経常黒字構造も終わりつつありますし。

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さて話は元に戻しまして、消費税の軽減税率を巡って政府・与党内で野党も巻き込み、対立構造が生まれている模様です。具体的には、公明党が軽減税率を強く要望して財務省がそれを受け入れた、というもっぱらの噂です。11月8日の麻生財務省の会見を見ても軽減税率導入を前提にしたシミュレーションはばっちりできています。さすが財務省、余念がない。公明党は選挙公約にも軽減税率の導入をうたい、山口代表が「消費税10%と軽減税率はセット」と明言していますからね。既に軽減税率の対象品目の絞り込みの作業を開始して、新聞業界をはじめとするマスコミ業界が強烈なロビイングを開始しています。他方で安倍首相は軽減税率に関して明確なスタンスを示しておらず、逆に言えば本人の立場を考えると本音のところでは気が進まないのだろうと考えられます。

で、そもそも論に戻るわけですが軽減税率とは「対象品目を予め特定して税率を低く設定する」という仕組みですので、既得権益を擁護する仕組みです。生活スタイルを変えるような新しいサービスは業界団体も無くそもそも議論に上りませんからね。よく新聞業界が「我々は活字文化を担っているから軽減税率を」などというのですが、若年世代からすれば

税制

 「i-pad買ってyahoo読めよ。そしたら軽減税率どうこう言う前にタダだぜ。そんぐらい高齢者でも使いこなせるはず。」

で終わりな訳です。そのために大金ばらまいて総務省が全国にネットワークつくったんですから。「Yahooの記事は新聞が出元」という反論もあると思いますが、別に新聞の全国宅配というシステムを維持しなくても「情報ソースを取ってくる人」さえ入れば良いわけですから、それで軽減税率を維持する理屈にはならないでしょう。軽減税率の導入を決定すれば、一斉に各業界が永田町に陳情に参る姿が思い浮かびますし、公明党もそれを狙っている気がします。ちなみにこういうときに真っ先に陳情にくるのが皮革業界なんですけどね。あくまで一般論ですよ。

消費税だけを見て議論するから「逆進性(低所得者ほど負担が多い)がある」などという議論が起き、軽減税率の議論になるのでしょうが、それで問題があるなら生活保護の支給水準を上げるのが本筋です。どっちが効率的かと言えば、ややこしい新制度が必要で中間コスト・政治コストが発生しまくってかつイノベーションも阻害する前者よりも後者でしょう。 税制というのは市場原理を最大限に発揮されるようにシンプルに構築されるべきで、問題があれば給付で対応すべきなのです、、、本来は。残念ながら我が国ではこのようなケースで政治的妥協を繰り返した結果、複雑怪奇な税制が出来上がっておりますが。ということで安倍総理には「軽減税率とかマジ辞めて」という英断を期待しております。

ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2013年11月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。