災害時には「ラジオ」が最大情報源 --- 長谷川 良

アゴラ

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ウィーンの国連で先月30日、国際赤十字赤新月社連盟が「世界災害報告書」(World Disasters Report=写真)を発表した。全283頁、7章から構成された報告書のテーマは災害時での人道支援と通信技術の役割だ。


第2章では2011年3月の東日本大震災と通信技術の関わりについて言及されている。それによると、震災地ではインターネットのネットが壊れたが、被災地以外の国民は被害状況や安否確認のために短文投稿サイト「ツイッター」を発信、その件数は急増したという。通常の場合、1分間平均3000件だったが、震災後はその件数は1万1000件と約4倍に急増したという。

すなわち、日本の国民は当時、1時間66万件、1日1584万件のツイッターを発信したことになる。世界に約12億人の信者するローマ・カトリック教会の最高指導者ローマ法王フランシスコの場合、今年3月法王就任してから前法王べネディクト16世のツイッターを継続して開始したが、先月27日にはそのフォロワー(読者)が1千万人を超えたばかりだ。東日本大震災時、日本国民は必死にツイッターを発信しながら身内や現地の被害状況を知ろうとしていたことが推測できる。日本は米国、ブラジルに付いて世界で第3番目のツィッター利用国だ。

震災地域は主に漁業地で住民の約30%は60歳以上だ。彼らはソーシアル・メディア・コミュニケーション(SNS)に馴染んでいない世代だ。東日本大震災の場合、コミュニケーション網が破壊されたこともあって、ラジオが大きな役割を果たしたという。東北地方の国民が情報の確保として利用した通信手段はラジオで約68%、携帯電話38%、20%がインターネット、スマートフォンは6%に過ぎなかったという。

国際電気通信連合(ITU)によれば、 現在、世界で使用されている携帯電話台数は約68億個という。すなわち、ほぼ1人1個の携帯電話を所有していることになる。2014年には先進諸国では携帯電話保有率は100%に達成し、中低所得国でも89%になると予想されている。アフリカ西部の最貧国シエラレオネでも、国民の60%から70%が携帯電話を所有、ないしはアクセスがある。

シリア内戦では、国民はYouTubeやSkypeなどを通じて世界に内情を伝達し、国際社会に救済を要請してきた。通信技術の発展で多くの命や財産が守られる。大災害では、情報を迅速に収集し、救済計画を練ることが大切だ。通信・監視衛星の役割は今後、益々重要視されていくだろう。例えば、津波の場合、衛星を利用した早期警告システムは大切だ。いずれにしても、人工衛星の利用などはまさに時代の恩恵というべきだろう。

フィリピンでは8日、史上最大規模の台風30号が直撃し、1万人を超える犠牲者が出、住居や道路も破壊された。世界災害レポートによると、フィリピンの携帯電話総台数は人口約9400万人を上回るほど普及している。島間の通信では、国民はフェイスブック、ツイッターなどを好んで利用してきたという。ちなみに、同国政府は昨年12月、台風対策のためにソーシャル・メデイアの確立を決めたばかりだった。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年11月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。