イエレン副議長、質疑応答でもハト派スタンスを貫徹 --- 安田 佐和子

アゴラ

米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン副議長、議長指名の公聴会で米上院銀行委員会を前に堂々ハト派スタンスを貫徹しました。一部のマーケット関係者が懸念したようにタカ派的と連想させる言葉はほぼ見当たらず。量的緩和(QE)も、「コストよりも利点が勝る」と断言してました。ウォールストリート(WSJ)紙でのリキャップは、こちらからどうぞ。

ちなみに公聴会という勝負どきのファッションは、2010年の副議長指名での公聴会と同じく黒一色コーディネート。違いは、金メダルのように輝くゴールド・ネックレスです。(ご参考:カバー写真)。

2010年当時、胸元は真珠を合わせシルバーグレーの髪との相性もバッチリ。

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以下は、 バークレイズのマイケル・ギャピン米エコノミストによるレビューです。

「前日公表された証言テキストと同じく、サプライズはなかった。イエレンFRB副議長の目的は承認採決を通過することであり、新たな政策イニシアチブを打ち出したりこれまでの見解と異なる発言を避けたといえよう。

金融政策は証言テキストに沿う内容で、2012年4月11日を始めとした講演に近く緩和策の必要性を説いていた。低金利を通じた緩和策が住宅や自動車など景気敏感なセクターを刺激し、最大限の雇用へ導くと主張。長期失業への懸念も繰り返し、広範な社会的損失と経済の長期的生産性の打撃を与えると論じた。足元の非常に緩和的な政策が、結果的に正常化をもたらすとも発言。これは前週、FRBのイングリッシュ金融政策局長とウィルコックス長統計局長が表したレポートと一致する。(注:イングリッシュ金融政策局長は、失業率が6.5%を上回る状況では利上げしない戦略が効果的な景気刺激を与え、基準を引き下げも有効になりうると分析。ウィルコックス調査統計局長は別のレポートで、インフレ見通しが抑制された状況では経済のたるみが緩和策を正当化すると主張した。)

マイク・クラポ米上院議員(暫定予算案・債務上限引き上げ案で反対票を投じた共和党議員、アイダホ州)との応酬は、教務深かった。QE終了時期について質問されたイエレン副議長は、従来通り非農業部門就労者数(NFP)の増加は、景気後退に伴う解雇の『巻き戻し』に過ぎないと返答。いずれ『巻き戻し』の効果は薄れ雇用の伸びが鈍化するため、力強い回復へ導く支援策が必要と述べた。イエレン副議長の発言は、当方のQE縮小時期が2014年3月とする当方の見通しに則する。

米上院銀行委員会の重鎮であるクラポ議員、鋭い目がタカのよう。

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イエレン副議長は広範にわたる基準での失業率は高止まりしていると発言しており、不完全雇用や長期失業などを考慮した上で労働市場が依然として健全でない点も強調したといえる。半面、失業率の数値目標『6.5%』から引き下げる可能性については明確な立場を示さなかった。米連邦公開市場委員会(FOMC)が推計する長期的な失業率は『5~6%』と明言しており、FOMC内で数値目標の引き下げに反対する参加者の存在を連想させる。」

首尾一貫してハト派寄りだった証言内容を好感し、ダウ平均とS&P500はザラ場でそろって最高値を更新。イエレ副議長が株式相場に対して「バブルのような状況にはない」とはっきり言い切ったことも、後押ししたのでしょう。

公聴会後に報じられた関係者のコメントによると、米上院銀行委員会はイエレンFRB副議長の承認採決を来週早々に行う見通し。22人の委員のうち民主党が12名、共和党が10名である背景から、可決は間違いありません。イエレンFRB議長誕生のカギを握る米上院・本会議では、60票の支持が必要となります。民主党55議席、共和党45議席のところ、こちらも60票は確保されるでしょう。ただし、バーナンキ議長に対する再任投票結果70対30より不支持が上回る可能性が濃厚。FRB創立100年でようやく女性議長が誕生するというのに、民主党と共和党の対立を背景に反対票数は最大になってしまいそうです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年11月14日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。