創業者の顔に泥を塗る「吉兆」ブランド

アゴラ編集部

松花堂弁当を考案して有名な湯木貞一というのは、大阪の料亭「吉兆」を創業した人物です。料理人として初めての文化功労者でもある。彼は鰻屋の息子だったらしい。大阪で有名な料理人、神田川俊郎という人も東京の鰻の名店「神田川」の出なんだが、食い道楽の街、大阪で認められる料理人二人が、まず最初に鰻に触れた、というのが興味深い話です。


大阪には、カウンター割烹、というスタイルの店がたくさんあります。料理人がカウンターの中で仕事をし、客とやりとりしながら料理を出す。同じようにカウンター内の仕事ぶりを見せる寿司文化の薄い大阪ならではの接客スタイル、というわけ。戦前に「吉兆」の湯木貞一が最初に出したのもカウンターだけの店だったようです。その後、彼は自分の長男に本店をまかせ、長女の婿は東京、次女の婿は京都、三女の婿は船場、四女の婿は神戸と、それぞれ店を持たせ、会社組織にして「吉兆」ブランドを全国へ展開し始めます。

福岡のデパ地下で「船場吉兆」が消費賞味期限切れの菓子や総菜を販売していたことが発覚し、さらに大阪の本店や各支店でも和牛や地鶏の産地偽装、客の食べ残しの再提供などが判明したのが2007年でした。「船場吉兆」はその後、廃業。こうした不祥事を受け、本店や残りの支店も襟を正して再出発したはずです。

ところが、11月26日に「京都吉兆」が、お中元やお歳暮などのカタログギフト商品として販売したローストビーフについて、結着剤の使用を明らかにし、商品を自主回収して購入者へ代金を返却する、と発表しました。食品衛生法では、ローストビーフに肉をつなぎ合わせる結着剤を使うことは許されていません。食品添加物としての結着剤にはさまざまな成分が含まれています。肉をつなぎ合わせるほかに、弾力性を高めたり着色したり保水作用を強めたりするんだが、成分に使われるカゼインナトリウムやリン酸塩は、健康を阻害する要因にもなり、このためローストビーフと銘打った商品に使うことができない理由になっています。

これを知りつつ、ローストビーフならぬ「結着ビーフ」を売っていたとしたら、料理人として恥ずべき行為です。自主回収すればいいというものでもない。健康被害が起きていたらどうするつもりだったのか。「京都吉兆」関連各店にはミシュランの☆がついています。2011年に北海道洞爺湖ウインザーホテル内の「あらし山吉兆」は二つもらっている。2012年には「京都吉兆嵐山本店」が三つ、京都祇園の「HANA吉兆」は一つ付いている。それにしても、ここんところミシュランの☆付きレストランで不祥事が相次いでいる。タイヤ屋はタイヤだけ作ってればいいですな。「京都吉兆」の徳岡邦夫氏は、あるインタビューで「食材と真摯に向き合い、湯木貞一の言葉を大切にして精進していきたい」と語っている。創業者も草葉の陰でさぞ嘆いていることでしょう。

日々是雑感
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これ、実際にラーメン店をやってるブログ主が書いているので説得力がありますね。コスパがいいとか、アフィリエイトで得するとか、いろいろメリットがありそうです。どんな業種でもブログなどによる発信力は必要なんでしょう。

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アゴラ編集部:石田 雅彦