師走となれば一年の総決算。今年も10大ニュースやら流行語大賞など様々なランクが発表されつつありますが、今年、経営の世界で一番目立った人を挙げよと言われたら私なら楽天の三木谷浩史氏を一押ししたいと思います。
年間を通じて氏や会社の名前はマスコミを通じてコンスタントに出ていたと思いますが、特に注目されたのは楽天イーグルスの優勝で会社の名前の宣伝効果抜群だったかもしれません。しかし、それ以上に私がこれでしょう、と思っているのは医薬品のネット販売に関して大バトルを演じたことだったと思います。医薬品ネット販売問題についてはもともと安倍首相が解禁すべき、という発言をしていたところ、厚生省からのちゃちゃで制限が付保され、三木谷社長が猛然と抗議し産業競争力会議の民間議員を辞任すると発言していました。ところが、その後安倍首相に翻意され、結局首相とは一線を交わらせることはありませんでした。
ただ、三木谷社長が単に今回の医薬品ネット販売で政府に喧嘩を売っただけならそれは傘下のケンコーコムのビジネスのためと思われても仕方がないのですが、今からさかのぼること約2年半前、2011年に氏が経団連を批判、「ガラパゴスを守っている」とし、退団したことに非常に強い印象を持ち続けています。つまり、三木谷氏は歯に衣を着せぬ発言と信条が日本人にはできない技だと思っています。
勿論、氏が、ハーバード大学院に通ったり、お父様がイェール大学の客員教授をしていたことで国際感覚に非常に敏感であったことは事実です。しかし、それ以上に日本のビジネスのやり方に対する不満を不満とするだけでなく、自分で実行して変えていくというところに真似できない強さがあるのだろうと思います。
同社が英語で仕事をする、そのためにはTOEICが800点を新入社員の基準とするというのは確かに批判も多いのですが、一民間企業のやり方であって外部から何か言われる筋合いのものではないのです。むしろ三木谷教室がどのような実験を繰り返すのか、興味津々見続ける方が楽しいのであります。
その楽天、なぜかここにきて株式市場の方でも注目されています。ジャスダックに上場していましたが、東証一部に鞍替えしたこともあり、ジャスダックとしては大黒柱がなくなったと困惑の状況なのであります。ジャスダックから東証一部とは成長過程から成熟過程に移ったような感じかと思いますが、同社もイーグルスの優勝もあり、成熟期に入ったということでしょうか?
ただ、少なくとも私は三木谷氏が政界、財界を通じてまだまだ暴れてほしいと思っています。日本で注目される企業、ソフトバンクやファストリテイリングはその経営に携わる孫氏、柳井氏とも後継者探しをしています。そういう意味でカリスマ経営者は必ずどこかでバトンタッチすることになりますが、その跡を継ぐ若手筆頭は三木谷氏であり、それ以外に見当たりません。氏は実は海外でも高い評価を受けており、世界に通じる日本企業の経営者として日本の顔になるはずです。そういう意味からも私は氏に高い評価をしております。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年12月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。