日本人の誇り ~ 祝! 和食の無形文化遺産登録 --- 岡本 裕明

アゴラ

今年は富士山といい和食といい世界に認められる登録が行われたことで実に喜ばしいと思います。特に今回選ばれた和食は単なる食を超えた芸術的要素がある点を含め、日本人の誇りとすべきではないでしょうか?

数十年前、海外で日本食といえば寿司、天ぷらにてりやきチキンが最も有名だった気がします。スーパーに行けば香港製の出前一丁が山積みされ、カップヌードルも日本食の代名詞でありました。昔の同僚のブラジル人は会社の昼食に豆腐を一丁買ってきて皿に入れて醤油を浸かるほど入れて、「健康的だわ」と言って食べていたのが今でも鮮明な記憶となっています。


その日本食も海外では独自の発展を遂げてきました。寿司は今や、色彩が非常にきれいな巻物を中心にヘルシーである点も含め、カナダではかなりの支持を受けています。天ぷらは残念ながら脂っこく、健康的ではないというイメージが先行し、今一つでありますが、街中のごく普通の日本食レストランに入れば必ずあるのが幕の内をイメージしたランチボックス。そこには寿司、天ぷら、焼きそばの上にてりやきチキン、サラダ、ごはん、味噌汁のパタンが王道のコンビネーションとなっています(寿司にご飯が出てくるところがミソであります)。

数か月前、久しぶりにどうしてもアメリカのてりやきチキンが食べたくなり(カナダのそれと違います)、わざわざ、シアトル郊外の昔懐かしいてりやきチキンのチェーンレストランに入ったら相変らず、ゴムのような薄っぺらいチキンが山盛りになっていてそこにてりやきのソースが浸るほどかかっているのが出てきました。さすが、なんでも食べられる私の味覚をしても半分でギブアップしましたが。

そんな別世界の日本食を食べていると日本に来た時、やはり、旨いなと思わせます。味もそうなのですが、良い店に行くと器が素晴らしい点は疑いの余地がないでしょう。皿にしてもカップ一つにしても美を意識せざるを得ません。せめて良い酒器くらい使えば安い酒もうまくなるかと思い、店を訪れればおちょこ一つ15000円也の値札に思わずおののいてしまいましたが。

和食のすばらしさは日本の地形や風土、地方の歴史を取り入れた郷土料理にも溢れていると思います。北海道から沖縄まで各県のみならず、ごく狭い特定地域の特産、名産をふんだんに使った料理が選択できるところにも日本食の奥行きを感じます。

バンクーバーで食事をするとロブスターをよくお見かけするのですが、これはバンクーバーを含む西側では取れず、東の大西洋からはるばる持ってくるのです。その距離は北海道から沖縄よりもはるかに遠いわけですからこれをカナダの料理の代名詞とされるとうーん、と考えてしまうのです。一方、バンクーバーでこの1、2年、オイスターバー(色々な生牡蠣を提供している店)がやけに流行っていてどこの店も物まねで今や、「またオイスターバーか」と思うほどになっています。日本は食の種類の豊富さにおいても追随を許さないレパートリーがあると思います。

最後にこれら日本食を支えているのは日本人そのものであるということでしょうか? クックパッドには星の数ほどとの素晴らしいレシピが日々アップされていきますが、これもすべての日本人が美味しいものを食べたいという気持ちを持っているからこそ支えられる文化だと言えるでしょう。

日本食の無形文化遺産指定は海外に居住する私だからこそ、より一層、嬉しく感じるものであります。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年12月6日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。