クリスマス商戦も当然のごとくEコマース優勢 --- 岡本 裕明

アゴラ

アメリカのクリスマス商戦に異変が起きています。今年は昨年比2.4%程度の増加が見込まれていますが、昨年の3.0%、一昨年の3.4%、更には2010年の4.0%には届きそうにもありません。そして、やや苦戦するクリスマス商戦の中で最大の注目を浴びているのが先週、モールなど商店へのビジターが21%も減ったという点であります。


通常、クリスマス前の最終週はクリスマス商戦のピークとなり、何処もかしこも人、人、人となる一年で最大のかき入れ時となります。しかし、その訪問客が21%も減り、売り上げは3.1%も減少しているのは何故でしょうか?

単純にはEコマース、つまり、アマゾンなどを通じて購入する客が増えたとみられています。クリスマス時期のEコマースの売り上げは2009年が40ビリオンドルに満たなかったのですが、昨年は約57ビリオンで今年は60ビリオンを越えてくるとみられるほど着実に成長を重ねているのです。確かに混みあっているモールで駐車場を見つけ、ごった返して、だだっ広いモールを当てもなく歩くより椅子に座り、コーヒーを飲みながらクリックすればモノが配達されるほうがどれだけ便利か、ほとんどの人はそれを実感しているのです。

もう一つ、クリスマス商戦が盛り上がらない理由として賃金はまだそれほど上がっていないという見方があります。賃金は2010年以降1%台の低い伸び率が続き、残業を含めた労働時間はこの一年はほぼゼロ増、更にはパートタイム労働者は2700万人台と高水準が漸増する状態となっています。つまり、労働者の収入は大きく伸びておらず、結果としていえるのは失業率は順調な回復を見せるものの広く薄い景気の回復ぶりということでしょうか?

また、アメリカ人が今年消費を増やしているのは健康関連とレジャーでファッションなどへの消費は抑える傾向にあるとされています。例えば、昨日や今日の北米の新聞は派手なポストクリスマスのバーゲンセールの広告が満載なのですが、7割引といった割引率はもはや「普通」になっている状態なのです。

アメリカでも一部アパレルメーカーは在庫が積みあがっている模様で今年のポストクリスマス商戦の値引率は例年にない水準まで下がる可能性があります。

私も今年は26日にアメリカのモールを覗きに行く予定にしておりますが、正直、買う予定のものはありません。わざわざ人がごった返している中で気に入ったものがなくて価格に妥協して買うのはもはや時代の流れに沿わない気がします。

アパレルや靴、ファッション関係などの商店に共通して言えるのはサイズ、色が店により揃わないという弱点なのです。ところがEコマースならこの弱点をかなり補えるわけです。つまり、経営側の効率ははるかに高いということでしょう。ならば、何故、それでもモールに出店するかといえばアンテナショップ的な発想がより強まっているとも言えそうです。

一方、日本で今話題になっているのがゾゾタウンがパルコと共同で店で見て、ゾゾタウンで買う、という逆手商法であります。これはリテーラーの間で大変話題になっているようで、デパートや衣料専門店はもはや「マネキン」のようなものでそこでお金を落とさない流れが着実に増えているともいえるのです。ルミネなどは絶対反対でパルコはこれが時代の流れとして受け入れたようです。

家電量販店ももはや、ネットとの勝負に挑まなくてはならない時代です。現物を見て、ネットで買う、という潮流は多少の違いはあれども全世界共通なのかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年12月25日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。