知り合いのカナダの商業フィナンシャルブローカー。彼の仕事は顧客のビジネス資金の調達を顧客に代わり交渉、調達する商売で日本ではあまりなじみのないビジネスです。そのブローカー氏、別件で掛けた電話の内容をすり替えるやいなや、猛烈な勢いでまくし立てました。「自分が長年このビジネスをやっていて銀行がこんなに金を貸さないところだとは思わなかった」というのです。
銀行からの融資を確保するのは難しくなっているのは事実です。これは銀行がより保守的な姿勢に転換しているためで、「貸すリスクより貸さない安全」を考えている公算が高いのです。理由は低金利で銀行の利ざやも小さい中、リスクが吸収できないと考えたらどうでしょうか? つまり、逆説的なのですが、低金利であればあるほど銀行は融資したくなくなり、むしろ、国債などでまわした方が確実なのかもしれません。
更に先進国ではどこでも金融を監督する省庁、更には新たなる法律でがんじがらめにしているため、ルールが貸し出しをしにくくさせているともいえるのです。アメリカでもカナダでも日本でも金融機関の貸出先が正常かどうかというのは非常に重要な視点であり、それこそ半沢直樹ではありませんが、不良化した債権など持っていたら金融庁から何を言われるか分からないという話は事実なのであります。
となると銀行にとって通常貸し出し業務では何が楽か、といえばまずは確実な担保があることに越したことはありません。不動産担保はその点、有力であり、だからこそ、銀行は不動産ローンは喜んで貸す傾向にあります。また、借入者の雇用の安定性に問題があれば保証会社の保証を取ったり保険に入るという手法もあります。つまり、銀行は極めて低いリスクで貸し出しをすることに慣れてしまったことで一般的なビジネスローンへのリスク審査能力が下がっていると共にモチベーションもない、ということなのかもしれません。
ビジネス向け融資が厳しいのはもう一つ、私のブログでも時々指摘させて頂いている通り、ビジネスサイクルが極めて短くなり、IT革命によるビジネス環境の抜本的な変化がしばしば起きていることがあげられるかと思います。一方の金融機関の審査部門はそこまでは判断できません。だからこそ、担保ガチガチの確実な融資先に偏りやすいということでしょう。
更に挙げると上場会社と非上場、個人事業主とは財務諸表、経営のガバナンスなどが圧倒的に違うということです。非上場企業の財務諸表は怪しい取引が良くあるものです。「この貸付なに?」と聞けば、「自分に貸している」で「金利はあるときなしの催促なし」なんていうのもしばしば見受けられるのです。「経営者は誰」と聞けば一族郎党でトップ亡き後は激しい内輪もめなどというドラマにも出てくる骨肉の争いが起きたりすれば貸している金融機関としてはへとへとになってしまうのであります。
三菱東京UFJが中小企業向け貸し出しをどんどん絞り、毎年信用金庫一つ分ぐらいの貸し金が減っている理由はまさに上述の理由がバックにあるのかもしれません。ではもう一つ、みずほ銀行などは海外企業への融資を開拓、実行しているようです。しかし、ランクがダブルB以下でも貸す勇気がそこにあるとすれば銀行の体質はやはり、昔と変わりはないのかもしれません。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年12月27日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。