昨日のブログに書いた「はたらくおじさん」と「はたらかせるおじさん」の話は、幼少時の親や学校の先生に教えてもらった教えや考え方に無意識に影響を受けてしまう危険性を示しています。大人から教えてもらうことの中には、大切な知識や情報もあるのですが、一方で偏った価値観を植え付けられてしまう可能性もあると思うのです。
戦後の高度経済成長期には正しかった考え方も、平成に入りまったく通用しない価値観になってしまったものはたくさんあります。
私が20代だった、1980年代は男女雇用機会均等法がようやく出来るか出来ないかという時期でした。女性の就職は短大が有利で、4年制大学だと就職しにくいと言われていました。女性社員は「お茶くみ」と呼ばれ、アシスタント的な仕事をする事務職で、社内結婚して寿退職するのが理想とされていました。
女性は「クリスマスケーキ」と呼ばれ、24までは価値があるが25を超えると価値がなくなると揶揄されたものです。
20歳で短大を卒業して、24歳までに社内で相手を見つけ、結婚退職して専業主婦になり、子供が生まれたら、ローンを組んで郊外に家を買い・・・という「幸せの方程式」が存在したのです。
1997年に山一証券が自主廃業し、日本の終身雇用制が大企業でも崩壊したことから、労働市場の流動化が一気に進み、女性の社会進出が広がって、「寿退職」や「クリスマスケーキ」という言葉は死語になりました。
山一証券破たんの半年前に、私は大手信託銀行から外資系金融機関に転職しました。その時、銀行の同期から「都落ちした没落武士」を見るような冷やかな視線を感じたことを覚えています。当時は、日本の大手企業から外資系に転職するのは、一種の「裏切り者」と思われていたような時代だったのです。
「何が正しいかは、時代の価値観によって変わってくる」
絶対的な価値観は世の中には存在しません。人を殺したり、人のお金を勝手に自分のものにしようとしたりするのは明らかに犯罪です。しかし、そのような白黒がはっきりしないことが、世の中にはたくさんあるのです。
家は買った方が良いのか、借りた方が良いのか
車は持った方が良いのか、必要ないのか
結婚はした方が良いのか、しなくても良いのか
転職はした方が良いのか、するべきではないのか
投資はした方が良いのか、やらなくても良いのか
・・・・
1つの価値観に固執すると、時代の変化に取り残されることになります。パソコンにこだわり、スマホへの対応が遅れた会社が業績の悪化に悩むように、時代によって変わってくる価値観があるのです。
「変えてはいけないもの」と「柔軟に変えるべきもの」。2つをうまく使い分けるのは簡単ではありませんが、変えることを恐れて、行動出来ない人の方が多いように見えます。
自分の価値観を見直してみて、本当にそれは変わらないものなのかをもう一度考えてみると、新しい未来が見えてくる可能性があると思います。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年1月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。