昨年の年末の株式市場では、12月25日の取引で奇妙な現象が起こったと言います。株式の売り注文が増え、特に株主優待の手厚い銘柄などが売られることが多かったと聞きました。
その理由は、今年からの税制の変更です。昨年までに売却した株式は値上がり益に対して約10%の課税でしたが、それが今年からは約20%に引き上げられました。12月25日までに売却すれば、株式の受け渡しが年内に完了しますから、税制上は有利になります。
例えば、500円で購入した株が、1000円になっていたとすると、去年の12月25日までに売れば500円の値上がり益に対して50円の課税ですが、26日以降になれば100円課税と課税額が倍になってしまうのです。
そのため、年末ギリギリに利益を確定させるための売り注文が殺到して、個人が保有している銘柄が値下がりすることになったのです。
このように税金というのは、知識があれば、支払う金額を減らすことができます。法を犯している訳ではなく、制度に乗っ取ってやっている訳で、これは「節税」です。
一方の脱税というのは、本来払うべき税金を誤魔化したり、隠したりして支払わないことで、これは犯罪です。
海外投資をしていると言うと
「税金払わなくて良い方法があるのですか?」
「海外の不動産なら日本の税金免除ですね?」
といった反応を示す人がいますが、大いなる誤解です。
例えば、香港の証券会社で購入した株式が値上がりすれば、その値上がり益に対して、日本国内でも課税されます。マレーシアで購入した不動産から得られた賃貸収入は、減価償却などの計算をした上で、日本での確定申告の金額に反映されます。
海外で投資をして海外で収益を得たとしても、日本に住んでいる居住者であれば、最終的には日本での確定申告が必要になります。外で得たお金だから日本は関係ないということにはならないのです。
もし、海外不動産投資をはじめれば、投資先の国と居住している日本という2つの国での納税が発生するのです。
私が、海外投資を自らも実践し、周囲の人にもすすめているのは、税金が目的ではありません。海外には、日本国内には無い投資の機会が提供されていると考えているからです。
年率7%で成長している国への投資、一人当りGDPが日本の10分の1以下の国のインフラへの資金サポート・・・日本人が持っている大切な金融資産を、預金金利が0.1%程度の日本国内で非効率に滞留させていては勿体ないと思うのです。
海外投資であっても、国内投資と同じように、税法に乗っ取り、正々堂々と納税する。「海外投資=脱税」という穿った見方をされてしまうのは、本当に残念で困ったことです。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年1月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。