都知事候補の家入さんに期待する --- Nick Sakai

アゴラ

老人ホームの互助選挙の様相を呈していた都知事選に、新風を見事に吹き込んだ家入さんに注目しています。都知事選が俄然面白くなってきました。氏の掲げる「既存の政治システムをハッキングして優しい革命」は、ひょっとすると本当に起きるんじゃないかと、海外からわくわくして選挙戦をウオッチしています。ネット上では、保守派のポジションを明確に打ち出される田母神さん(通称タモさん)と双璧をなす注目度ですよね。今回の都知事選当選は難しいかもしれないけれど、近未来の国政選挙での当選も視野に入ってきている感じです。


その破天荒さは見ていて清々しい。陣営もそれなりに準備はしているのでしょうが、基本行き当たりばったり。フェス感覚で、ツイッターで皆の意見を聞き、その日の行動方針を決めて、ボランティアを動員する感じ。マイクをがなり立てる街宣車を使わず、ポッドキャストで表舞台も楽屋裏も24時間だだ流し。初日の選挙費用はゼロだそうだ。猪瀬サンもこういうふうにやればよかったのに。どうせ当選したんだから。

すっかりオッサンの私だが、家入さんならばできそうな気がしてきました。

政治家に必要な三種の神器。地盤、鞄、看板。でもネットを使いこなせるカリスマがいればそんなものいらない。官僚的な支部ネットワークを張り巡らせて、ウグイス嬢雇って、支援組織や団体を動員して、集会や電話攻勢をする必要はない。ツイッターでつぶやけば、人は勝手に集まり、勝手にポスターをはり、友人知人に拡散してくれる。今日は、家入さんがツイッターでポスター貼りのボランティアを呼びかけると、今まで左も右もなく、選挙に関心も持たなかったような若者が文化祭感覚でポスター張りに奔走。その成果をtweetし合う光景が見られている。そこには、「動員されている感じ」が微塵もない。みんな文化祭の前日のように楽しんでいる。労働組合ならばお弁当と日当が出るところだ。

これは、選挙版クラウドファンデイングといっていいだろう。つまり、選挙資金は基本無料。すべて、個人の持ち出しInkind Contributionで賄う。陣営は、ポスター貼りに精を出す若者に日当はおろか交通費も払っていないだろう。皆喜んで「出資」している。選挙のプロセスそのものを楽しみ、自分のこととして結果を期待しているようだ。気づきを与えてくれた家入さんに感謝しているもよう。これは、家入氏の本業のビジネススタイルの自然な延長線である。居場所をつくる、人がよってきて各人ができることを出来るだけ貢献する、自然とプロジェクトが完成する、という流れだ。ロリポップの時も、シェアハウスの時も。

前回の参議院選挙では、山本太郎氏も、選挙フェスと称してツイッターを多用した。しかし、山本氏の場合は、もともとイデオロギーが明確で意識の高い浮遊層をネットでまとめ、既存の政党・組織活動を補完しという過渡的なものだった。再稼働反対デモ参加の余韻を忘れられないコアな都民を集めた感じだ。これに対し、家入氏の場合は、政治意識が必ずしも高くない若年層を啓蒙し、政治参加の面白さを体得させるということで大きく異なる。イデオロギーや既存政党・組織と結びつかない分、受け皿も大きくなり、いろいろな考えの人が集まれる。細川氏や舛添氏など他の候補者との年齢や社会的ステータス、組織バックアップなどでのコントラストが抜群に映える。絶好の舞台装置 だ。

家入氏は、自身が福祉・社会保障・防災などの各面への詳細な知識がないことも恥ずかしげもなく打ち明ける。その態度も潔くて、若さの特権か、好感がもてる。他の候補者なら、こうはいかない。ご乱心のお殿様は、原子力や再生可能に関して本当にどこまで知ってるのかと、「失言」を虎視眈々とマスコミに狙われ(可哀想に、昨日は「風力発電」がすらっとでてこなかった)、逆に東大卒のエリートは、むしろ、聞いてもいない知識をひけらかして圧倒し、聴衆は食傷気味だ。

家入氏には、古賀さんや飯田さんといった参謀がいないので、政策提案力が弱い。しかし、それを逆手に取って、フォローワーから政策や思いを集める企画を実施している。「 #ぼくらの政策」でツイッターで政策を募集し、氏もその声に対して返事を積極的に行っている。まあ、我々素人から見ると、「選挙前からそんなことやっておけよ」と突っ込みたくもなるが、選挙期間中に皆で政策を作る双方向感・ライブ感・グルーブ感がいいのかもしれないな。

「東京をぼくらの街に」。やはり、既存組織・集団とは無縁の家入さんが、ちょっと恥ずかしげにポケットにつぶやくところが、良いのでしょうね。右や左の人が言うと、同じ言葉でもニュアンスが変わって怖い。どの候補者も無所属を売りにしているけれど、それぞれ応援組織ががちがちに絡まっていることは明々白々で、こんなこといっても、党の政調会長に一蹴されてしまうガス抜き企画だ見切られてしまいますから。

そこで、おじさんの私にも、ひとつまじめに提案させてください。

・ぼくらの政策 Nick Sakai

家入さんは選挙もクラウド(群衆)で、官僚・組織を相手に戦うのだから、当選した暁には、政策立案・行政執行そのものも、クラウドでいきませんか?ツイッターやネットを駆使して。いわば、官僚政治からクラウド政治への転換です。間接民主政治から直接民主政治への転換と言ってもいい。これだけICTが発達した世の中なのだから、もっとスマートにいきましょう。

行政の本質は、(1)住民から税金や社会保障料を徴収して、(2)さまざまな分野や人に再配分する。(3)そのための仲介役としての統治機構・行政が働く、という3本柱です。

でも、今の東京の問題は、高齢化とデフレで、(1)若者・中堅層を中心に納税者の負担感、不公平感が増して、(2)むだな配分が多い(年寄りに偏った福祉や生活保護の不正受給)ことです。そして、悪いことに(3)都庁や都議会議員に無駄が多く、行政サービスが効率的でない。その結果、経費もかかる。売り上げが悪いのに、経費と仕入れコストが嵩むダメ企業の典型です。

でも、情報が公開されていないか、情報の整理が悪いので、お金が誰から、どのように徴収されて、どこに、どのように使われているのか、その間にどこで経費が抜かれているのかがわからない。

だから、家入さんやホリエモンがお得意のICTを駆使して、お金の流れを一元管理できるよう見える化すればいい。PLとBSとCSを作ればいい。民間では当たり前の、ERPを都庁にカスタマイズして導入するイメージです。その設計も業者に委託するのでなくて、当然クラウドコンピューティングを活用したオープンソースでただでやりましょう。家入さんの得意分野です。

ERPの強みは、ITシステムに併せた業務プロセスの効率化です。WEB上でERPをつくる過程で、公共が担っている行政サービスの無駄が白日の下にあぶり出されます。例えば、家入さんがやっている行き場を失った若者のシェアハウス、あれって本来は公共事業ですよね。というか、都庁のどこかに、その執行権を持っていてもやっていない、レイジーな部署があるはず。そういう費用をどんどん切り込んで、NPOや民間に業務移管すべきです。

こうやって、みんながボランティアで政治だけでなく、行政執行にまで関わってくると、もらう側も、払う側も、使う側も罪悪感を覚えてチートできなくなるものです。(3)の行政機関の官僚組織の中の人は、もっと効率的にやろうとするでしょうし(しかしクラウドが中央集権的な官僚組織そのものを駆逐しそうですが)、(2)生活保護や年金の不正受給や、オーバーサービスな医療・介護は、見られていると思うと抑制されるでしょう。(1)の出す側も、所得がなくても資産がっちり溜め込んでいる人とか東京にはたくさんいるので、「僕らの監視」に負けて、渋々供出します。こうして、出せる人から出せるだけ払ってもらい、必要な人に必要なだけ支給する仕組みをつくれば高 齢化も乗り切れることでしょう。今、国が進めるマイナンバーやビッグデータを組み合わせれば効果大です。

キーワードは(1)ICTによる見える化、(2)「僕たち」住民の積極的行政参加、(3)現物出資・現物支給を軸とする行政のクラウド化であります。

道州制の導入や、地方自治の拡大などという、果てのない観念論争よりも、クラウド行政システムのほうがよほどインパクト大です。結局、真の行政改革とは、こうした、ひとりひとりがコツコツまじめに参加していく、まさにホリエモンのいう何もないゼロから1を足していくことでしか達成されません。

どうぞご検討いただければ幸甚です。それでは、皆様のご健闘をお祈りします。

Nick Sakai
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NPO法人リージョナル・タスクフォース、代表理事
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