米議会予算局(CBO)が4日に公表した経済・予算見通しは、オバマ米大統領にとって耳が痛い内容となっていました。
CBOによると2014年会計年度(2014年9月末に終了)の財政赤字は、5140億ドル。2013年5月時点の予想値5600億ドル、および前年同期の6800億ドルから縮小を見込んでいます。国内総生産(GDP)比では前年度の4.1%を下回る、3%を予想。過去最悪の財政赤字を記録した2009年度の1兆4000億ドル(GDP比9.8%)からは、隔世の感があります。ファニーメイ、フレディ・マックの公的資金返済が大きいんですね。
ただし2014~23年度の10年間スパンでは、従来予想の6.3兆ドルから7.3兆ドルと赤字拡大方向へ修正しました。背景として、成長見通しの引き下げがあります。ベビーブーマーの退職に伴う労働人口の減少が歳入を押し下げるだけでは、ありません。
戦犯に、医療保険制度改革(オバマケア)を挙げております。オバマケアの規定では、週当たり労働時間が30時間のフルタイム労働者を正社員とし企業に保険加入を義務付けています。しかし労働者が医療保険支払い負担を嫌気し保険加入を拒否、あるいは雇用主がフルタイムを雇用しない傾向が出てくるわけです。
特に、労働者が自主的にフルタイムを選択しない理由が問題です。
フルタイム従業員となって30時間以上の勤務で生活補助金を受け取る権利を失うリスクに配慮し、労働市場から退出しかねないことが、大きな理由。ざっくり言うと、ナマポを維持したいスケベ心に近いイメージでしょうか。
労働人口が低下すれば必然的に労働者も減り、さらに労働時間が短ければ所得も伸びず、成長の足を引っ張り、歳入が落ち込むという、魔のスパイラルに陥りかねないのです。CBOは従来、2021年に80万人の労働人口の減少に相当する労働力が失われるとの予想を示していましたが、今回は2024年までに250万人相当としマイナス幅を広げていました。
成長率をみると2014年度は3.1%増、2015—16年度も3.4%増と潜在成長率超えとなっています。しかし2017年度には、2.7%増までモメンタムを失ってしまうんです。高齢化を含めた労働人口の低下が、成長鈍化の理由です。
潜在成長率超えは、夢と消えるのか。
(出所 : CBO)
ヘルスケア・ドットガブ(healthcare.gov)の医療保険登録者数が当初目標の300万人を1月24日に達成して安堵したオバマ米大統領には新たなダメ—ジであると同時に、中間選挙で米上院の奪回をねらう共和党には格好の攻撃材料となること必至。オバマケアに反対していた共和党側には、願ってもないニュースだったことでしょう。レームダックが叫ばれて久しいオバマ政権には、一難去ってまた一難・・・試練が続きます。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年2月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。