まだまだ来訪外国人に慣れていない日本 --- 岡本 裕明

アゴラ

JALの国際線機内食の二食目は軽食なのですが、そのパッケージにカゴメの紙パック入り野菜ジュースが入っています。私はこのジュースを以前から見るたびに周りの席に座る外国人がどういう反応を示すのか、興味津々眺めています。なぜかと言えばその紙パックには何処にも英語が記載されていないのです。紙パックに野菜の絵が描いてあるから分かるだろう、と言うのは日本人の判断です。


ちなみに今回のフライトはキャビンアテンダントの人がわざわざ、パッケージの中にはベジタブルジュースが入っている、と説明しておりました。JALなんだから日本人が主体なので問題ないだろう、と考えているとかなり様相が違ってきています。今回はざっくり乗客の8割が外国人で乗り継ぎ客も多かったのですが、円安による訪日客の増加が影響していることもあるでしょう。

カナダでは英語とフランス語が公用語ですので全国区で販売する商品は両方の言語が併記されている必要があります。また、家電や自動車には分厚い使い方説明書が英語とフランス語版の両方が入っており、ある意味、経営効率の悪さが指摘される一方で、顧客が言葉を通じて不自由しないことを前提としている点においてはさすが移民国家カナダであると感服します。更には銀行のATMでは機械によっては中国語表記ができるものもあり、公用語にとらわれず、顧客へのサービス心が根付いているとも言えそうです。

もう一つは食品については原料の表記についての関心が高いことでしょうか? レストランなどでは食材に何を使っているかサーバーはきっちりと答えることができるのが当たり前。私のところのカフェのような小さな店でも食材原料表は用意してあり顧客に聞かれた際、すぐにこたえられるようにしています。理由は健康上、宗教的理由で食べられない食材を持つ人はかなり多いことがあるのです。ある意味、外国に来て何にびっくりするかといえば人々の食へのこだわりではなく「制約」が大変多いということでしょうか?

ネットでレストランの予約をしようとすれば必ず、食事などの制約などがあれば事前にお聞かせください、という欄があり、そこに書き込むことができるのです。

スーパーマーケットで鶏肉を買おうと思ったら表示のところに「ハラル対応」と書かれていたのはびっくりしました。それまではハラル対応商品はそういう特別のコーナーでハラルの認証を受けたところから卸していたものを商品として置いていたのですが、このスーパーでは多分、認証を取ったのでしょうか、一般販売コーナーに普通に置かれていました。しかも価格ももはや特別料金ではありませんでした。

訪日外国人の不便さというのは案外日本人では気がつかないことが恐ろしくたくさんあるものです。今日は食の表示という点で書かせていただいておりますが、電車ひとつ乗るにしてもかなり不親切かもしれないと思っています。それは切符を買う不便さでしょうか? 実は外国では自動販売機はあまりポピュラーではありません。カナダでも自販機の切符売り場には人が一人か二人しかいないのにいつまでたっても切符が買えず、電車に乗り損ねることは珍しくありません。理由は人々が機械の操作そのものに全く未知であることでしょうか?

日本は住居表示も複雑ですし、表記そのものがあまりなくなっていることもあります。案外、外国人は事前にプリントアウトした紙を手にしてうろうろしていることを見かけます。日本人はスマホを使えるので良いのですが、外国から来た人にスマホのネット回線は繋がっていないという認識がすっ飛んでいる気がします。

書き出せばいろいろ出てくるのですが、結論的には日本が魅力的でリピーターを呼び込むには「未知の国に飛び込む」のではなく「事前にその魅力を十分に調査出来て、旅行が日本人の手助けなく、計画でき、実行できるようにすること」ではないでしょうか? 私の言っている意味は案外、理解していただけないかもしれませんが、外国人は旅行に際しては結構綿密なプランを作る人が多いということを締めの言葉としておきましょう。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年2月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。