パズドラに続く、次のヒットゲームとは?ゲームの歴史から考える

村井 愛子

歴史とともに先鋭化してしまうサービス

ハードウェアとコンテンツは、セットで普及するわけですが、歴史とともにどうしても先鋭化してしまいます。ターゲットのニーズに答えていくうちにマニアックになり、気づいたらターゲット層が縮小しているのです。


例えば、ファミコンは家族で楽しめるゲーム機ですが、その後スーパーファミコン、プレステ、プレステ2、プレステ3、、、と続くにつれハードが高性能になり、それに合わせてソフトもグラフィックが豪華になり、プレイ時間が長くなるという風に変遷していきます。当初のターゲット層はファミリーであったのに、気づいたらゲーマーがメインユーザーになり、使ってくれるユーザーの母数が減っているのです。

これはゲームに限らず、世の中に存在する全てのサービスが同じ道をたどります。例えば洗濯機もただ洗うだけじゃなくて、乾燥機能や洗濯機の掃除機能をつけたり、、と色々ニーズに答えようとした結果、たくさんボタンがあって、使いこなせる人が少数になっていたりします。

歴史を人もとくと、たいていちゃぶ台をひっくり返して全てを0に戻すプレイヤーが現れます。例えば、家庭用ゲーム機の場合は、任天堂がWiiを発売、スペックはそこそこだったものの「お母さんに嫌われないゲーム機」を目指して、再びターゲットをファミリー層に引き戻しました。

ソーシャルゲームの先駆けはモバゲーの「怪盗ロワイアル」ですが、モバゲーとGREEが自社プラットフォームを解放するとともに多くのゲームデベロッパーが参入します。そして、時間が経つにつれ、どんどんゲーム内容がコアになっていき、対象ターゲットも狭まっていきます。そして、その流れは家庭用ゲーム機よりも断然早かったのです。
なぜかと言えば、ソフトが買い切りの家庭用ゲーム機に比べて、ソーシャルゲームは永続的に課金することが出来、かつ課金ポイントのデータを取得することが可能だったため「いかに課金させるか」というテーマの元どんどん進化していったからです。

問題になったコンプガチャを初めてとして、ギルドバトル、レイドボスなどMMORPGでもおなじみの仕組みが導入され、ユーザーゲームをプレイするモチベーションは、いかに上位に食い込むかというテーマになっていきます。ソーシャルゲームの主戦場が、フィーチャーフォンからスマートフォンに移ると、今度はカードバトルと言われる、いかにレアなカードを入手するかという目的に集約され、ゲームデベロッパーは美麗系と言われるカードを描ける絵師の確保に奔走するようになります。そして、気づいたらほとんどのゲームが「美麗系カードを集めるゲーム」になってしまうのです。
その結果、ボタンをポチポチするだけの無課金ユーザーは、こういった設計のゲームを楽しめなくなっていき、気づいたらゲームをプレイしてくれるユーザーの母数が減っていくのです。

こういった状況の中、ちゃぶ台をひっくり返したのが「パズル&ドラゴン」です。パズルという初心者にも親しみやすいライトゲーム要素を持たせて、無課金でもある程度遊べることを重視したゲーム設定がされていました。
パズドラ以前は、ダウンロードされているゲームでも100万ダウンロード前後でしたが(LINEゲームは除く)、パズル&ドラゴンは2014年1月時点で2300万DLを突破しています。

次のパズドラはどこ?

パズドラのすごいところは、ビジネス的にはちゃぶ台をひっくり返す必要がないのに、ひっくり返したというところです。家庭用ゲーム機は、ソフトの値段が一定であり売り切りです。つまり、対象顧客が現象するとそのまま売上げに影響します。
しかし、ソーシャルゲームはユーザーによってゲームにかけるお金がバラバラです。コンテンツを先鋭化させればさせるだけ顧客単価(ARPPU)をあげることが可能なのです。月数十万以上をゲームに費やすユーザーも存在しており、ユーザーの母数が減っても顧客単価が上昇してれば、売上げが上がります。そういった状況の中で、無理にちゃぶ台をひっくり返すリスクを追うことの方がむしろ冒険でした。
ガンホーさんは、売り上げよりも、むしろたくさんのユーザーに楽しんでもらいたいという視点で、このゲームを作ったのではないかなと思います。

「パズル&ドラゴン」の登場以降、業界に激震が走り「パズドラみたいなのを作れ」が合い言葉になり、実際に類似ゲームが次々と作られていきます。
その後、ソーシャルゲーム大手のコロプラから「クイズRPG魔法使いと黒猫のウィズ」が発表され、こちらも大ヒットします。2014年2月時点で2000万ダウンロードを突破しています。

この流れから考えると、パズルやクイズなど、万人が興味を持てるライトゲームを搭載することが大ヒットの鍵のようです。
コンソール機時代はパズルやクイズは枯れたコンテンツであり、それらが一番隆盛を極めていたのはファミコンあたりでした。ライトゲームの類いは、ファミコンやスーファミあたりで出尽くしている感があり、プリミティブな視点で楽しんでいたゲームを発掘することがテーマかと思います。

ところで、以前から「アトリエ系のゲームはどうかな」と思っていました。アトリエ系ゲームとは、1997年に第1作「マリーのアトリエ」が発売されたのですが、練金術師の主人公が、様々な素材を集めて合成していき、目的のアイテムをこさえていくというゲームです。
ただ、目的のアイテムを複数合成させたり、合成させたアイテム同士をさらに組み合わせたりと複雑になりがちなので、どうしたものかなーと思っていたら、個人が作った素晴らしいフリーゲームを見つけてしまいました。(以下リンクは、ゲームの実況動画です)

ミミクリーマン

これは、ミミックというモンスターが主人公なのですが、伝説の剣を手に入れるため、自分の宝箱に罠を仕掛けて近づくモンスターからアイテムをゲットし、合成していくゲームなのです。

自分の宝箱に罠を仕掛けるのがミソで、初期段階を見ただけだと数個のアイテムから簡単にアイテムが合成できます。しかも、モチーフがゲームユーザーが慣れ親しんだ例のRPGを想起させるため、世界観を受け入れやすいです。

罠を仕掛けて、アイテムを合成ということで「影牢」×「アトリエ」のコンセプトをRPG仕立てにした感じですが、手順が非常に単純化されています。動画中のコメントでも「アプリで出してー」というコメントが多いので、かなり可能性を感じました。もちろん、個人作家の方が作られたゲームなので、著作権的に内容を改変するなどは必須ですが。

※「トリブログ」からの転載です。
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