人事部長が理解すべき、女性活用の“負の側面”

安藤 光展

■女性活用の“負の側面”

ちょっと、そっち系の関係者方に怒られそうなタイトルですか、何事にも負の側面はあります。いわゆる「女性活用」だって例外ではありません。

先日、気になるニュースが出ていたのでまとめてみます。

普通に女性のキャリアサポートなどで出産・育児支援をすると、企業がコストを負担し特に何か新しい価値が生まれるわけでもないという残念ことが起きます。福利厚生費がかさみ、企業の利益を圧迫するだけで、特にメリットがないことも。まぁ、仕組みを作らなければそうなるでしょうね。

そうではなく、女性が企業を退職せずに残れる仕組みを構築し、さらに復帰後のキャリアプランを明示していき、イキイキと働いてもらう事で、辞めた場合に雇う新人の採用コスト・教育コストをなくすことができます。もちろん、慣れ親しんだ職場ですので、企業価値向上につながる業務も比較的容易ですよね。

で、女性の役職者(主に課長職以上)を増やすというのは、またちょっと違う視点が必要なのですが、まず必要なのは、「仕組み」です。コストにしかならない女性活用は企業も女性スタッフもどちらも不幸になる可能性が大きいのです。

事例を見ながら、改善策のヒントを探っていきましょう。

■育児休暇はただの押しつけ?

配置転換は、就業規則の条項に定めているときには、配置転換命令権を使用者が有していると考えられています。ただし、職種や勤務地を限定して採用したときは、労働者の配置転換の同意が必要となります。配置転換は、労働者の利益に配慮して行使されるべきものであり権限濫用はできません。育児休業復帰後に配置転換をする場合は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」第10条、第26条などに反する行為であってはなりません。
育児休業から復帰の社員をどこに配属する?

2年間、育児・出産・有給休暇などで休んでいる女性が、元いた部署に戻れるのか。そんな質問に人事労務の方が答えたのが上記の引用です。

2年か。大手でも組織再編があったり、大きな変化が起こりうる時代に、2年いない人を現場に復帰させることは、部署のパフォーマンスという視点においてどうなのか。

休暇のため、その変わりに転属してきた人をまた異動させてまで、元の部署に女性を戻さなければならないのか。

もちろん、答えはケースバイケースでしょうけど、当事者同士のコミュニケーションをしっかりとり、会社側も女性側もお互い納得した形で復帰したい所。女性が納得できないから辞めるとなれば、2年間の給与や保証はなんだったんだとなってしまいますよね。

女性の活躍が企業のCSRの争点となる3つの理由」という記事でも書きましたが、第1子出産前後の女性の継続就業率は、正規職員では5割を超えるけど、パート・派遣では2割にも満たず、不安定な立場の女性ほど継続的な就業が困難な状況を示唆しているのです。

そもそも、非正規雇用の女性スタッフをどうするのか、という項目も一緒に考えるべきでしょう。

■女性の希望は昇進?それとも安定?

女性はそれほど昇進を望んでいないという調査結果もある。日本マンパワーの「女性のキャリア意識調査」によると、「できることなら昇進したい」かに対し、「あまりそう思わない」と「思わない」の合計は男性は13%だが、女性は29.6%。同様に「できることならリーダー・管理職になりたい」で「あまりそう思わない」と「思わない」の合計は、男性が20%に対し、女性は49.3%と半分近くに上った。
「甘やかすな」か「男の価値観押しつけるな」か――政府が押す「女性活用」とは

拙著『この数字で世界経済のことが10倍わかる–経済のモノサシと社会のモノサシ』でも書きましたが、日本の管理職に占める女性の割合は10%未満と言われてます。ちなみに、日本政府の目標は欧米並みの30%。

また、世界で見れば、日本の女性取締役比率は1%と言われ、先進国では最下位となっています。ちなみに、世界では10%と言われています。欧州で女性登用を法制化している所もあります。(男女共同参画白書:内閣府より)

このあたりは、数字の文脈(モノサシ)を考慮しなければなりません。背景のない数字は根拠に乏しく、実際には役に立ちませんから。

しかし、現実の女性側の意向として、そもそも昇進を望んでいるとかというのは別の話。出産育児の課題もありますが、政府の動きと、現場の動きにズレがあるように思うのは気のせいでしょうか?

そもそも、多様な働き方を認めることが先なのに、多様性を受け入れるかとおもいきや「女性管理職30%」という枠に無理矢理あてはめるという、管理職数至上主義も存在するらしい。

出産育児休暇からの復帰部署に関してもそうなのですが、当事者としっかりコミュニケーションをとって、お互いの落としどころを探すことが大切できすね。当事者の関係ない所で企業の重要事項が決まる事も多いですが、気をつけたい所です。

「女性部長」が多い企業はどこか?2014年版「女性部長ランキング」トップ50』という東洋経済のランキングも参考までにどうぞ。

■ワークライフバランスの“罪”

現在一流と言われている人、活躍して自分の道を進んでいる人が、若い時に「ワークライフ・バランス」を考えていたでしょうか。 自分はプライベートも充実させたいから、といって仕事を早々に切り上げていたと思いますか?そんなことは、まずありません。その場所に至るまでは、がむしゃらに働き、がむしゃらに努力していたはずです。だからこそ、充実した「今」があるのです。
ワークライフ・バランスなんて言っている余裕、ありますか?

上記の記事では、20代前半で、ワークライフバランス、つまりプライベートの充実を求めすぎると、成長機会を逃す可能性があるよ、という話をしてます。

誰もがプライベートの充実を求めて当たり前です。しかし、仕事よりプライベートを優先しすぎると、結果的に、効率のよい業務スキルが獲得できず、こなせる業務量が新人と大差ないという、最終的に進歩のない人間になってしまうことも。

ワークライフバランスとCSRーー社会貢献という育休について」という記事でも書きましたが、産休・育休は男性も課題でもあります。このあたりは、東洋経済の「育休取得者数、トップは三菱UFJの1503人–育児休業取得者数トップ100」という記事も参考にどうぞ。東洋経済のCSR関連ランキングは非常に有効なデータの一つだと思います。(ステマじゃないよ)

こういうとがむしゃらに働くのは「ブラック」だとか言う人がいますが、ブラック企業の最大の課題は「サービス残業が多いこと」と言われています。「がむしゃらにはたらく=長時間労働」ではありません。トータルでのワークライフバランスの配慮は大切ですが、若い頃の極端な優先順位づけは、ほどほどに。

企業活動の中でも、自社従業員へのアプローチは年々増えている印象があります。ブラック企業問題と並んで、女性活用問題も大きな労務問題のようです。

企業として、コストにしかならない女性活用ではなく、企業価値を高められるような仕組みと対策をとりたいところです。僕も30代前半でいわゆる子育て世代です。当事者側なので、非常に注目しているCSR領域には間違いありません。

(「企業が理解すべき、女性活用“負の側面”の3つのポイント」より、修正・加筆して転載)