複雑化して先が読めなくなっている世界 --- 岡本 裕明

アゴラ

このところニュースを見ていて私と同じような感じを持った人も多いかもしれません。先が読めない事故や事件が多い、ということです。

まずはウクライナの問題。住民投票を強行するクリミア共和国での選挙結果はほぼ想定されていますが、その先が実に読みにくいところにあります。もともとクリミアがロシアと一緒になりたい、という「夢のような話」が本気で進んでいること自体がおかしいのですが、欧米、ロシア、そして当のウクライナが開票結果を受けた月曜日以降どのような態度を見せるのでしょう。非常に注目されます。


破たんしたビットコイン騒動もよくわかりません。事実、メディアの見出しには「ビットコイン謎だらけ 取引所破綻1週間 定まらぬ「事件」の構図 何が起きた/どこへ消えた/被害者は誰」(日経)など深堀すればするほど分からなくなるのです。マスコミも必死で遂にビットコインを作ったとされるナカモトサトシなる人物まで登場しました。ただでさえ「ビットコインって何?」を説明できない多くの大人にとって「どこへ消えた」はむしろ「どこかに消えてほしい」という願望かもしれません。

投資をしている人たちにとっても読めない社会はあると思います。私が定期購読しているある株式情報ニュース。正直、感心するほど読みが鋭いのですが、このところ、読みにくい(不透明感漂う)という前提を置きながら先行きについて相場観をほぼ、完璧に読み外しました(つまり全く逆に向かったということです)。実にめずらしいことだと感じていました。

STAP論文も不思議な事件です。STAPはできるのか、できないのかそのものも謎ですが、それ以上に小保方さんに浮かぶ数々の疑惑は何なのでしょう? ただ、STAPで小保方さんが一夜にして注目の人となった際、「研究に支障があるから」とマスコミを遠ざけたのですが、今となっては私は違う意図があったのかな、と勘繰ってしまいます。少なくとも彼女の作為が非常に多くの迷惑をかけたことは事実。ならばそこまで手柄がほしかった理由はなぜでしょう? 彼女を取り巻く人生がそうさせたのでしょうか? 想像が尽きません。

消えた航空機というのもあります。マレーシアの飛行機は中国へと北に進路をとるはずが、西に向かった可能性があるという見方も出ています。原因も含め全く分からない尽くしのこの事件も不思議です。考えてみれば今やGPSで人がどこにいるかすら簡単に判明できる時代です。それなのに航空機がなぜ、人工衛星を使った位置情報確認システムに反映されないのか不思議であります。IATAとしてこういうことは議論しないのでしょうか?

東京の税務署でいくつか提出物や処理の相談がありました。ところが丁寧な応対してくれる「専門家」の人たちは「案件」三件それぞれについて一発回答頂けることはありませんでした。専門書を紐解き、上司や同僚に相談するという具合でした。特段難しい質問ではなかったことを考えれば、税務署の署員は税の専門家という「作業班」で自分の与えられた領域を少しでも超えるとほとんど分からないという状況に見受けられました。今回思ったのは税務相談は国税局の質問ホットラインが一番的を得た答えが一発で返ってきたと申し上げておきましょう。

いろいろ例を出してみたのですが、その意味は「複雑になりすぎた社会」とそれを紐解くのはそれこそビットコインの採掘ぐらい難しくなってきた、ということなのかもしれません。世の中、完全なる答えが無くなってきたともいえるのかもしれません。「ああ言えばこう言う」というのは「こう言う」隙間や世の中のバグがあるからかもしれません。

ただ、私がいつも思っていることは「世の中、そんなに一方通行にはならない」ということでもあります。それは地球上の社会が政治、経済を通じて繋がっていること、そして行き過ぎに対する歯止めができる社会に成熟していていることだろうと思っています。それは人類が不毛な戦争を何度も繰り返してきてようやく目覚めつつあるとも言えます。とは言いながらも、新たなる事件のケースシナリオの中では最善、最悪が論じられ、人々は最悪ケースがあたかも起きると想定しやすいともいえるかもしれません。

私は「本質は何か」ということをつかむことが今後のニュースの読み方のキーワードではないかと思っています。そしてあまりの極論には疑問符をつけるという癖をもつことも大事だと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年3月15日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。