河野談話の「歴史的和解」が必要だ

池田 信夫

読売新聞によると、韓国の朴槿恵大統領は「安倍総理が村山談話と河野談話を継承する立場を発表したことは、幸いだと考える」と安倍氏の対応を評価したそうだ。これがどこまで韓国政府の方針なのかわからないが、政府間で決着がつくことは望ましい。


言論アリーナでも片山さつきさんや長田達治さんと話したように、この問題の事実関係ははっきりしていて、単なる朝日新聞のでっち上げだ。それを宮沢首相が政治決着しようとして、河野談話に「強制」をにおわせる表現を入れたために、日韓関係が20年以上にわたって混乱してきた。

食い違いの原因は事実関係ではなく、アジェンダ設定である。日本は強制があったかなかったかを問題にしているのに対して、韓国政府は「強制はあった」という見解を表明する一方で、アメリカに対しては「強制だろうとなかろうと戦時売春は性奴隷だ」という二枚舌を使っており、NYタイムズなどはこれにだまされている(東京支局は気づいて黙っている)。

米国務省は事実を知った上で「女性の人権問題」として韓国を擁護する立場を取っており、これは政治的事情で変えようがない(オバマ大統領が日本を擁護したら議会が反発する)。したがって韓国政府がデマ宣伝をやめることしか、収拾の方法はないのだ。

そのためなら、日本政府が最小限の譲歩はしてもいい。Tobias Harrisもいうように、中国情勢が不安定化する中で、こういうtrivialな問題で日韓がいつまでも争うことは危険だ。韓国さえ忘れれば解決するのだから、これ以上、刺激すべきではない。

河野談話のときのように、政府間では政治決着しても、民間は騒ぐだろう。しかし今さら河野談話を見直しても展望はない。オバマ来日にそなえて、外務省が米政府や韓国政府と協議した上で「歴史的和解」をはかろうとしているなら、正しい方向だと思う。